足りないヒカリ。霞んだ月を見ていると何故か悲しくなる。すり減ったカカトと治らない打ち身。老いぼれになった私を照らす月の光は今夜届かない。ため息一つも億劫でわがままさえもしまい込むと風は仄かに夏の匂いがするし、川面の音(ね)も優しい。去っていく今日を惜しむ様に胸の隅づみまで吹い込むと鼻の奥の緑の匂いが遠い過去を呼びます。ほら、また何処かで飼い犬が吠えた。こんな夜はやっぱり悲しい風が吹く。