前職を退き、早2年。
思い返せば深夜の納品時に
実に不思議な出来事を幾度と体験した。
その中でもひときわ反響が大きかった
入社直後の体験談を再びお送りする。



のトイレ事件は(注❶)
読者の皆さん以外に
他言する事は無かった。
事実、あの日以降
平穏無事な毎日が続いているし、
タイミングを逃してしまって
あえて言う事でもないかと
一人合点している次第。
でもあのトイレ事件だけは
何故か脳裏に焼き付き
某病院に納品する際は
一つ手前の店舗で
トイレを拝借してから
現場へ向かうようになった。
注❶自動のトイレでは無く、勝手にフタが!

の日も暗証番号を押し
重い硝子のドアを押し開けると
10㍍先のもう一枚のドアを開けて
さらに奥の一般駐車場へ出て行く。

後日実際の病院を撮影。奥へと廊下を通って行く。

3往復もしただろうか
納品を終え、
画像の鉄の扉を超えたあたりで
右腕に虫が絡まる様な
痒い感覚をおぼえた。
薄暗い中、
私はあまり気にもかけず
左手でそれを払う動作をした。
ムズ痒い感触は消え
再び暗証番号の扉をくぐり抜けて
灯りに照らされたトラック後部で
手押し台車を折りたたんでいると
右腕に40㌢程の金色っぽい
髪の毛が絡んでいるのが見えた。
慌てる私。
右腕を振り
それを左手で払い落とす仕草に
先輩Mさんは“何してんの”とポツリ。
いゃあ、虫が腕に
冷静を装いながら咄嗟に嘘をついた。


りの車中は
髪の毛の事で頭が一杯になった。
勿論私は坊主頭だし、
教官のMさんも短髪。
廊下を歩く事で静電気を帯びた私に
たまたま落ちてた髪に帯電し、
腕に絡みつく説。
いやいや、どう考えてもおかしい!

と、すると
天井から落ちてきた!

その夜、妻にその事を話すと
たいした興味も示さず
普通に流された。
まだ細く続く小さな恐怖に
その夜私はなかなか
眠れなかった。