[Reborn]
校1年生の夏休み、
父の実家である福井県の若狭高浜で
人生初のアルバイトを経験した。
そこは日本海の中でも
有名な海水浴のメッカ。
地元の海の家や飲食店・喫茶店に
乳飲料を卸す販売店を経営し、
ひと夏で1年分以上の
儲けを稼ぎ出す位
当時は儲かったと父が言っていた
私はそんな故郷に憧れ、
1ヶ月限定の住み込みで
働かせてもらえる様、
父に口を聞いてもらった。


浅の白い砂、透き通る海、
優しい波が自慢の若狭の海は
毎年、涼を求めて関西や四国、
関東地方からもリピーターが多く、
ピークを迎える頃の浜辺は
大勢の海水浴客で賑わっていた。

実際の若狭高浜の浜辺。

築された母屋の2階を寝ぐらにし、
3食昼寝付きのバイトは
高校生にとっても超優良物件。
夕食は地元で獲れた鮮魚や野菜、
旨い米に舌鼓を打ち、
入浴後に程よい睡魔を催して
2階の寝床で横になるのが
至福の時間だった。

かに回る扇風機。
お盆の夜、就寝してから
3,4時間程して再び目が覚めた。
つけっぱなしのラジオからは
当時人気のフォークシンガー
イルカ”を起用した
オールナイトニッポンが流れていた。
彼女の軽快なトークと
ハガキの内容の面白さで目が覚め、
時折笑いをこらえながら
聴き入ってしまったが
ラジオの音声が一瞬途切れた時に
ふと誰かが階段を上がってくる
物音に気がついた。

“誰なん?”

返事がないまま
足音はふっと止まった。
再び動き出したその音は
新築の建屋の階段をゆっくりと上がり
確実に近寄ってくるのがわかった。
私は少し怖くなりうつ伏せのまま
タオルケットを被って身構えた。

トン、スーッ。

トン、スーッ。

やがてその音は階段を登りきり
青畳を踏みしめる鈍い音に変わった。

ミシ、スーッ。

ミシ、スーッ。

全身の毛穴が開いた感覚が続き、
うつ伏せになりながら
やり場の無い恐怖から
逃げたかった。
しかし、思春期の私は
怖いモノ見たさも手伝って
タオルケットの隙間から
少しだけ覗いてみた。

何も無い姿。
止まったままの足音。
ラジオが響く大広間。
逆にそれがますます恐怖心を煽り
辛抱していた小便を助長させた。
もう訳がわからなくなり
矢も盾もたまらず次の瞬間、
咄嗟の行動に出たのである。

イメージです。

後編に続く