地震や竜巻、豪雨が
未曾有の災害を起こし
さらに、
気象予報では例年より早く
梅雨が開けそうだと言う。
これらの天変地異の一説には
地球の地軸がずれている為だと
風の噂で聞いた。
グレーの空から雨が落ちる休日。
私は簡単に了解したものの
軋む膝を騙しながら
産まれたばかりの仔馬の様に
立ち上がった。
身支度をしてエンジンをかけると
道路からの生臭い外気が
車内に侵入してきた。
曇る車内。
デフロスターをONにして
ワイパーを作動させると
お気に入りの音楽は
聞こえなくなった。
S字カーブを過ぎて
しばらく車を走らせ、信号を右折する。
しかし、ほとんどが駅への送迎の為
思うように進まなくなってしまった。
“ここでいいわ”
妻は助手席を降り、体が濡れない様に
すぼめた傘のまま駅へと向かった。
私は渋滞の切れ目で右折をし、
裏道で帰る事にしたが
トイレに行きたくなり
帰り道を外れコンビニに立ち寄った。
用を足してから缶コーヒーを一つ購入し、
駐車場で缶を開けたが
空きっ腹に沁みていく温かな液体は
私の体を少しずつ目覚めさせた。
飲み干してそのままシートを倒し、
クラウスオガーマンのCDを聴いていると
助手席の背もたれ下あたりから
聞き覚えのある着信音が聞こえた。
妻のスマホだった。
応答すると公衆電話の妻の声は
明らかに焦っていて
妹との待ち合わせ為
それが無いと困るという。
“意図を読め“と
言わんばかりの妻の話に、
渋々了解し、
私は「一つ貸し!」
と楔(くさび)をうった。
シャンプーさえあれば
頭が洗えそうな豪雨の中を
再び車を駅へと向けたが
牛歩の様に進まない車列に
しびれを切らし閑静な住宅に路駐して
駅へと向かった。
打ち付ける雨。
傘を持つ手から脇へと雫が垂れ、
もはや濡れていない部分が無くなる位
ずぶ濡れになった。
妻は駅前の銀行の自動ドア奥から
手を降っていた。
持ってきたスマホを手渡したが
それをさっさと受け取り、
彼女は改札機の方へと消えていった。
夕方6時半を過ぎ
子供達のリクエストで
和食に腕を振るった。
はんぺんの野菜あんかけ、
赤魚の煮付けと三度豆のごま和え、
味噌汁を添えて妻の帰りを待った。
やがて、
スーパーのレジ袋片手に
妻は帰宅したが
“はっはーん、俺を酔わして
どうする”
淡い期待と動揺と
頂というネーミングも手伝って
チェリーボーイの気持ちになった。
幸い身も心も風呂で綺麗さっぱり
準備万端。
トッピングは髭剃りまでしたから
酔っぱらう訳にはいかない。
頂をいただいた。
ノドごしで旨い。すこぶる旨い。
普段、深夜業務の為に
あまりアルコールを飲まない分
グイグイいけた。
“なにー、アルコール7%?”
3本目を開けた頃に
その酔いの早さに気付いた。
後はプロ野球ニュースの記憶だけで
朝、雀のさえずりで目が覚めた。
リビングテーブルには
6本の空き缶と柿の種。
私の小脳には頂という響きが
別の意味で残っている。
*頂のヨイショではございませんので念のため。


