此岸とを隔てるスクランブル交差点を渡ってしまうとそこは深い森だった。
頭上で赤信号が明滅している。
台風はすこしの雨雲を置き忘れて、北の空へ抜けていった。
ビルの合間から月は、見えない。
霧雨が腕をひんやりと濡らす。
夜の東の街は、世界がすこしずつ滅びていくみたいにひっそりとシャッターを閉じて、呼吸を殺していた。
シャッターの森は、閉じた瞼の裏からぎょろりとこちらを見ている。
足元のアスファルトから潜めた息遣いが伝わってくる。
森に迷い込んだわたしたちは、ただ、歩く。
かたちのないものだからね、
と東の国から来た青年は、目尻にすっと細い皺を刻んで笑う
指先から琴の音を奏でながら
安らぎと絶望はとてもよく似ている
ある部分で同じものなのかもしれない
甘い音色に導かれるように森を進んでいく
その先にあるのが青い鳥なのか、
単なる行き止まりなのか、
それとも赤い宝石のような果実なのか
分からないまま、ただ森は深まっていく。