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here-after

日常からいちまいめくれた短いお話

気温32℃



ボートで外洋まで来た。



リーフの上は水深18メートルとそれほど深くない。



海の中は見渡すかぎり、青く、蒼く、碧い。



ありとあらゆる青が溶け込んでいて、

この色を表現する言葉を私はもっていない。



言葉なんて、あるものの断片なのだ。




透明度が高くビジビリティは30メートルほどあり、遠くの魚も煌いて蒼の世界を彩る。



流れが、強い。

外洋の潮流がぶつかる場所なのだ。



私の泳力では、思った方向にはどうやったって進まない。

もう流れに任せて進むしかない。


頬がちりちりと刺激を感じる。

目の前を流れて行くつぶつぶの白いプランクトンたち。

プランクトンてちくちくするんだね。



海亀は水流をものともせずに、すいすいと泳いでいく。



岩場を掴みながら進むと、左側に深くドロップオフが切れ込んでいる。



見おろすと蒼の先は仄暗く、底が知れない。

鳩尾が空気の塊で押されたようにくわっとする。




怪物と戦う者は、

その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない



岩場を握る掌に力が入る。



ドロップオフの先端は100メートル以上落ちている。


引き込まれたら、帰ってこれないなぁ。


吸い込まれたら、海になれるだろうか。





深淵をのぞく時



深淵もまたこちらをのぞいているのだ





底の方から、銀色がちかちかと反射する。



身体の輪郭を取り戻す。

意識が身体からすこし離れてドロップオフに飲み込まれかけていたのかな。



光の大群がやってくる。

潮に逆らって白銀の腹をした体長60センチメールほどの魚たちが。



目の前はあっという間に銀紙鯵の群れに取り囲まれた。


鯵たちはカッと目を見開き、顎をつき上げて水を身体で切るように真剣に泳いでいる。


まるで巨大な一つの生命体のように海の中でうねる。


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目を奪われていると、堂々とした泳ぎで鮫がやってきた。

あたりを睥睨し、鋭い動きで進んでくる。


お住まいに、お邪魔してます、と心の中でつぶやく。


銀河を漂う孤独な宇宙船のようだった。

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