大根臭 | ジュニマネ回想記

大根臭



今日、サシャを自宅まで送った後で、
私はクライアントの店へ
ミーティングに行くことになっていた。

私のクルマの中には、サシャが持っていた煮物の
大根の匂いがモヤ~ンと漂っていた。

クライアントのお店は、バレーパーキングオンリーなので、
サーフボードのワックスや砂で汚れた私のクルマも
玄関前で私が降りると、駐車場係が停めてきてくれる。

こんな時、ダイコンの匂いはあまりよろしくない。

ハワイのローカルは、もちろん日系人も多いから
大根の匂いにはある程度慣れているかもしれないが、
私が降りたクルマの運転席に乗る駐車場係は、
この匂いを嗅いだら間違いなく、私を疑うだろう。

私は大根の煮物をちょっと恨みつつ、
クルマの窓を全開にしてクライアントのお店に向かった。

そういえば、ずいぶん前にガールズナイトで出かけた時に
友人のひとりが日本の「松前漬け」という
切り干し大根や昆布やスルメをふんだんに使った
かなり香り高い食べ物を持ってきてくれたことがあった。

「おいしいから持って帰ってね」と、
友人はみんなにふるまうつもりでそれを持って来てくれたのだが、
何しろ夜はまだ始まったばかりだったから、
みんなの分の漬物をそのまま後部座席に残し、
私たちは駐車場係にクルマを預けて出かけた。

楽しい時間を過ごした後、
駐車場係が私のクルマを店の玄関前まで回してくれた時、
その若いお兄ちゃんは、
なぜか恥ずかしそうにうつむき加減で
私のためにドアを開けてくれた。

クルマの窓は全開になっていたが、
車内はものすごい匂いに満ちていた。

あの時駐車場係のお兄ちゃんは、
松前漬けの大根のあの匂いを、いったい何だと思っただろう。

どんな顔をして、クルマの窓を全開にしたのだろう。
気の毒なことしちゃったなあと、また思い出して笑う。







ぷぷぷ。

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