ずっと続きをやらなきゃな、と気になってました。6月7日の東京薬科大春講座のおさらいレポート第2弾・完結編です(第1弾はこちら です)。フローラ薬局の篠原久仁子先生と、東京薬科大名誉教授の指田豊先生のお話をまとめました。


陰陽五行説、薬膳というと奥深い分野なのでごくごく基本の言葉などをご紹介します。また文字だらけのレポートで読みづらくてすみません。ご興味がある箇所だけでもご覧いただければうれしいです。


●陰陽五行説とは


食物の栄養素といえば、たんぱく質、資質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどと表されるが、古代中国ではそのような概念はなく、「四気、五味、帰経」という陰陽五行説に基づいた分類であった。


陰陽は、万物をに分けること。五行説は、事物を「木、火、土、金、水」の五行に分けて考える中国の自然観、宇宙観のこと。


四気(四性)とは、食べ物の性質を「寒、熱、温、涼」の四つに分類したもの。


 熱性…体を強く温めるもの (該当する香辛料の例:コショウ、サンショウ、シナモン、トウガラシなど)

 温性…体を温めるもの (クローブ、シソ、ショウガ、ナツメグ、ネギ、ミカン(皮)、ミョウガ、ラッキョウなど)

 平性…体を温めも冷やしもしないもの(ゴマ、ウメなど)

 涼性…体を冷やすもの(オレンジ、ダイコンなど)

 寒性…体を強く冷やすもの(ウコンなど)


五味とは、食べ物の味を「酸、苦、甘、辛、醎(かん、塩辛いの意味)」の五つの味に区分けしたもの。


 酸…肝、胆に関係:(該当する香辛料の例)ウメなど

 苦…心、小腸に関係:ウコン、ミカン(皮)など

 甘…脾、胃に関係:オレンジ、ゴマ、シナモンなど

 辛…肺、大腸に関係:ウコン、オレンジ、クローブ、コショウ、サンショウ、シソ、シナモン、ショウガ、ダイコン、トウガラシ、ナツメグ、ネギ、ミカン(皮)、ミョウガなど

 醎…腎、膀胱に関係

 

帰経とは、食べ物が五臓(肝、心、脾、肺、腎)のどの部分に作用するかを表す。


たとえば山芋の生薬名は「山薬(さんやく)」というが、八味地黄丸といた重要な補腎の漢方薬にも用いられている。性味は甘・平性(温めも冷ましもしない)、帰経は腎・脾・肺。健胃作用があり、腎や肺を強化するので骨を丈夫にし、抵抗力を高め、風邪の予防にも役立つ食べ物。



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陰陽五行の図。相生関係とは、簡単にいうなら育成すると次はこうなる、というもの。木が燃えると火になる…というように。相克は抑制する働きのこと。水は火を消し、火は金を溶かす…というように。

本来ならば、下記の五行の色体表がすべて当てはまる。


五行 五臓 五竅 五腑  五味  五主 五指 五華 五季


火   心   舌 小腸   苦  血脈  喜  顔   夏


土   脾   口  胃   甘  肌肉  思  唇   長夏(土用)


金   肺   鼻 大腸   辛   皮   悲  毛   秋


水   腎   耳 膀胱   醎   骨   恐  髪   冬


木   肝   目  胆   酸   筋   怒  爪   春



※陰陽五行説については、こちらのサイト も参考にさせていただきました。


●薬食同源


「薬膳」とは、中国伝統医学(中医学)の理論を基にして、

・疾患の予防と治療

・病後の回復

・健康増進

・老化の予防

・強壮

などの目的で、生薬や食べ物を用いて作られた食事のこと。未病を防ぐ知恵も詰まっている。


「薬」という字は、草冠に楽と書く如しで、楽にしてくれる草のこと。つまり「薬食同源」とは、薬と食べ物は同じ健康を守る源であるという意味。そもそも薬(漢方薬)は、植物、動物、鉱物など皆自然にあるものを用いている。薬とされている植物の中には、生姜(しょうが)、大棗(なつめ)、肉桂(シナモン)、陳皮(みかんの干し皮)、山薬(山芋)など、私たちが普段の食事で摂取しているものもある。


こうした中医学の理論を基に、陰陽五行説を取り入れた食物の働きをよく理解し、家族の体質や季節に合わせた組み合わせを考えて調理すれば、普段の家庭料理でも立派な薬膳料理になる。



(まとめ)

――なかなかこの四気五味の食材を暗記してそれを基に献立を作ろうなどと考えると、途方もない労力に思えますが、実は私たちが普段から何気なくやっていること…たとえば風邪っぽいときにショウガ湯を飲んだりすることや、旬の食材を採ること(夏は体を冷やすきゅうりやトマトを食べたりする)なども、薬膳的な理にかなった摂取の方法といえるでしょう。まずは身近ことから、はじめるのがよさそうです。


●主な香辛料(スパイス)や薬味の効能


香辛料・薬味は料理にわずかに加えるだけで、味や香りを引き立てて、料理をおいしくしてくれる。そこで、香辛料・薬味の効能の第一は食欲増進作用、さらに胃液の分泌を促して消化不良を改善する健胃薬としての役割もある。健胃薬には「芳香性健胃薬、辛味性健胃薬、苦味性健胃薬」の三種類がある。また、殺菌作用、抗酸化作用の強いものもかなりある。香辛料や薬味を使うことによって、食塩の使用を減らすという効果もある。

(※効能については、利用方法など西洋のハーブと東洋の漢方などでは考え方も違います。あくまでも目安とお考えください)


<香りのある香辛料・薬味>

クローブ(丁子) 精油は虫歯に

セージ(サルビア) 食品の腐敗防止

ナツメッグ(肉豆蔲) 食品の酸化防止

ローズマリー 食品の酸化防止

レモングラス 貧血

ミカン(果皮は陳皮) 咳止め

ミツバ 鎮静

ミョウガ 風邪、鎮静

ニラ 強壮、血流促進、殺菌

シナモン 漢方では発汗薬

タイム 咳止め、食品の腐敗防止

フェンネル(茴香) 鎮咳

バジル 強壮、殺菌、口内炎

シソ 暑さ負け、のぼせ

ユズ 風邪に

ゴマ 滋養強壮

ニンニク 強壮、血流促進、殺菌

ヨモギ 止血


<辛味のあるもの>

コショウ 白コショウは発汗薬

ショウガ 漢方では鎮嘔、蒸したものは体を温める

トウガラシ 肩こり、神経痛などに概要

カラシ 湿布薬

ラッキョウ 漢方で心臓病に

ワサビ 殺菌

ヤナギタデ 消炎、利尿、下痢止め


<着色料になるもの>

ウコン 利胆、強肝

サフラン 婦人病

クチナシ 湿布薬、黄疸の薬


<その他>

 ダイコン 消化促進、咳止め、葉は風呂に入れて血行促進

 麻の実(麻子仁) 便秘薬

 クコ 強壮

 スダチ 風邪




 指田先生が「健康食品ブームというのがありますが、廃れていくものっていうのは結局“効果がない”ってことなんですよ」と前におっしゃってたことがありまして、大いに納得。逆に効果のあるものは、この漢方のように時代の荒波に揉まれても廃れずしぶとく生き延びる、ということなのでしょうね。

 スパイスの薬効に対する私たちの認識も、「~に効く」みたいな対処療法的な捕らえ方だけじゃなくて、もう一歩踏み込んだテクが使えるようになれたらいいですよね。たとえば今回知ったウコンの効果…肝臓に効くからってウコンばかりに頼ってしまうと、ウコンの別の作用である体を冷やすとかも蓄積されてしまうって、両面から見ることができる。すると「それだけ」に頼るのも控えなきゃならないんだな…とよくわかったり。もちろん素人判断は危険だけど、お料理に何気なく使っているスパイスが漢方的な視点から見てもいろーんな役割を担っているってことを知っておくのは大事かな、とも思います。いつも何気なく食べているカレーなんて、何種類ものスパイスを使っていて漢方的にも複雑な作用が絡み合っているお料理なんだなーなんて。そこで、スパイス一つにもこだわるカレー好きなかたには「薬膳カレー」の開発なんていかがでしょう?とか(笑)。これぞ台所漢方……普段の食生活を、また違う新鮮な目で見てみると楽しいです。