ベット 2008.09.30 ベット

癌が憎いと思った。


昼過ぎ、母からのメール。

伯母さんの容態が良くないと。

母は日帰り旅行中。

間に合うのか…。

今夜が峠だと。


今日は遅番。

時間が長く感じる。


何も考えず車を飛ばした。

小雨が降っている。


夜中の病室の扉をそっと開けた。

うわごとを言っている。

「5351…」

「おじーさんは死んじゃったでしょうーよ…。」

「おばあさん…」

「…」

聞き取れない。どうしても。

何が言いたいのか、

何を訴えたいのか。

理解できないもどかしさ。


体がだるいのか、顔を歪める。

皆で足をさすった。

「ひっぱれーひっぱれー」伯母が叫ぶ。


「お水…」

美味しそうに飲む。

薬をうち、朦朧としながらも言葉を発している。


「アハハハハハ…」

楽しいことを思い出しているのか

昔と同じ笑い方をする。

「温泉行こう。さぁ、行こう。」

「温泉、温泉」

そんな風に聞こえた。


「帰るよ、またね」母が言う。

その言葉に「気をつけて」

そんな風に…。


「伯母ちゃん、またね。おやすみ…」

声が震える。

思いがけず、

「おやすみさん。」

声が帰ってきた。


そして、起き上がろうとする。

確かに。

痛みと薬で朦朧としているはずなのに

見送ろうとしてくれていた。

胸が張り裂けそうだ。


am4:00。


癌が憎い。

ガンが憎い。


家に着いたのは朝の5時を回っていた。

布団にもぐり、すぐに夢を見た。

伯母がご先祖様のためにと病室で

紙コップ14個にそれぞれ水を入れ、供えている。

おかしな夢だ。