前回の続きになる。

 

ここまでは光が物体に当たった時に反射する光だけを追ってきたが、物体を通過する光のことも考えなければならない。そこで、例として2つの写真を取り上げる。まず、一枚目の写真だが、メインの照明は彼女達よりカメラマン側に位置していると思われる。この照明の光が彼女達を含めた物体に当たり、その物体の表面から跳ね返ってきた光を撮影したものとなる。これまで説明してきたように、彼女やステージのフォルムだけでなく、彼女達の髪型、表情、衣装、大道具、小道具などが反射色の違いとして認識できる。

 

 

一方、下の写真は彼女らの後ろに位置するディスプレイから強い白色光を出したときに撮影されたものである。ここで、光は白いが彼女らの髪、肌、服装の色などはほとんどわからず、色ヌケしているように見える。これは影になっているから色が無い、つまり黒色になると考えれば良い。そして、残念ながら対象物の詳細は分からず、彼女達やスピーカーなどのフォルムだけが認識できる。

 

(細かいことを言うと、左側の数名は少し色の違いや凹凸の違いが見えるが、これはディスプレイから斜めに入射した光の反射が見えていると考えている。カメラマンから見て斜めに立っている左から5番目の彼女は濃淡・色が判りやすいのは白色光を強く受けているから他の人達より反射光が強くなっているとも考えている)
 

透過光を使って物体を認識するという点に着目すると、今度はガラスのように光を通過する材料であれば認識できないのではないかと考える人が出てくるだろう。色がついていないハリスは吸収がほとんど無いとすると、水中での透過率はナイロンが98.5%、フロロは99.8%と小さいため (大気中だとナイロンが90.4%、フロロは94.2%)、よっぽど太いラインでない限り認識できないだろうと想像がつく。しかも、ヘラが釣れるような水域であれば水中は暗いので尚更見えないだろう。ヘラ釣りの場合、水中はバラケなどエサで濁っているならば尚更暗くなっているだろう。

 

ここで、光路も含めて考えてみる。

光源である空から放出された光は水面に到達し、さらに水中へと入っていく。ヘラは自分より上から降ってくる物体をコントラスト(光の有る無し)の強弱で見ることになるためにエサのように透過率が低い対象物は認識しやすい。対照的に、自分より底の方にある物体を見るためには、対象物表面から反射光を見ることになるのでエサのように反射率が低い対象物は見え難いと考えられる。エサの落下中にヘラの反応が良いのは自然落下するエサに警戒心を解くからかもしれないが、単に見つけやすいということもあるかもしれない。管理釣り場を経営するフライの杉坂さんは「トラウトは明暗の違いでペレット(エサ)を認識しているので、フライの色だけ考えてもダメで、天気と色を組合せて明度を調整しなければ釣れない」と言っていたが、「そのためには(ペレット表面から)の反射光ではなく、ペレットが光をブロックすることによるコントラストが大事だ」といったようなことをおっしゃられていたと記憶している。

 

ラインも同様で、反射だけでなく透過も考えることが大事であり、光源から対象物、対象物から魚までの光の経路を考えなければ魚が見ている世界は理解できない。ここで、水中のラインの見え方について研究した例があるのだが、話が長くなると思われるので今回はこの辺で。

 

それでは、また。