昨年の夏ころに実家に戻ったために、それまで通い詰めていた神流湖や神扇池に行く時間がとれず、比較的近い箕和田湖に行く機会が増えている。箕和田湖は池を取り巻く雰囲気は好きなのだがガツガツした雰囲気が嫌で足が遠のいていたのだが、管理人が変わったことで和らいだ雰囲気になったということもある。ただ、神流湖と比べると釣り人の数が多く、色々な話が聞こえてきて五月蝿いなぁと思うことも少なくないが、逆に、思わずホッコリしてしまうこともある。
つい先日のことだが、自製のウキを使っている人が
「今日は釣れねぇなぁ。いつものウキでないと」
と溢すとウキについて話が始まった。
「そうだよ、早く出しなよ。あの三枚合わせのヤツ」
「おぅ、三枚合わせでないと釣れないからなぁ」
「そうだ、そうだよ」
と朗らかに答えている。続けて、
「やっぱり、こう渋いとムクじゃないとなぁ。パイプだとアタリがでないよ」
「トップが詰まっていないと小さいアタリじゃ沈まないぞ。パイプじゃ空気が入っているので弾いちゃう」
と、何度聞いたか判らない定番中の定番のフレーズが出てくる。周りの人達は、本人の説を尊重しているようで否定はしない。楽しさを優先しているのだろう。あの雰囲気ならば、仮に自分が知り合いで隣で釣っていたとしても、そうですねぇ、変えた方が良いですよ、と答えるだろう。そういう穏やかで楽しい雰囲気は良かった。
そういえば、パイプトップはムクトップと比べてメリハリのある動きをするが、
「中空のパイプでは、ウキが動いたときにパイプ内の空気が圧縮されるから」
という解説を読んだことがあるが、もちろん、そんなことはない。パイプに閉じ込められている大気、つまり気相分子は室温程度ですら、とんでもない速度(*)で並進運動しており、トップの動きは分子から見ると動いていないのと同じといってよい。
また、別の記事では、
「パイプトップを使っているが、完全なパイプトップではなく、トップの真ん中くらいまでガラス芯が入っている半ムクになっている。だから、ムクのように敏感だが、パイプトップのように視認性が良い」
というものもあった。
それから、有名インストラクターによる解説に
「パイプトップよりPCムクトップの方が表面張力が少ないのでエサの重さが変わらなければ深くナジむ」
というものもあった。
こういうオカルト話は意外と耳にするが、釣り場ならば気にならないのは何故だろう。精神衛生的に好ましい遊びなのだろう、へら鮒釣りは。
それでは、また。
(*) 気体分子運動論によると、気相分子は様々な速度を持っているため、その平均的な速度は速度の二乗平均の平方根である根平均二乗速度で表される。大気中に多く含まれる窒素だと500m/s程度であり、桁違いの速さであることがわかる。