昨年、大病を患ったせいなのか、単に歳を取ったせいなのか、昔のことを振り返ることが増えている。

 

近所の見次公園で雑魚や小ベラを釣って遊んでいたのだが、魚風堂に出入りするようになるとヘラブナ釣りにのめり込むようなり、練馬に引っ越すと季節を問わずに、喜楽沼、石神井釣り道場、金木園、富士見園、新座FCなど近所の釣り堀に行くようになった。喜楽沼は水深がある上に釣りが難しいために頻繁に訪れたが、活性が高い盛期だと落下しているエサを激しくヘラがアタックしてしまい、ウキがポコポコと跳ねて釣りにならないこともあった。そんなときは底を切ったり、何ならカッツケで釣りたいと思っていた。お金を払ったのだから、一枚でも多く釣りたいと損得で考えていたと思う。だって、子供だったもの…

 

 

さて、先日のことだが、ウキを眺めていると対岸から様々な釣り場の話が聞こえてきた。その中で弁天閣の話になり

「あそこさぁ、上尾園の魚が入ったんで釣れるらしいぞ。ただ、宙もOKにしちゃったから、底釣りじゃ釣れねぇかもなぁ」

と聞こえてきた。家に戻って調べてみると、確かに、底釣り制限から自由釣りに変わっていた (ちなみに、8尺以上と制限していた竿の長さは5尺以上と変わっていた。随分、思い切ったルール変更だ)。

 

弁天閣は武蔵の池と近くて、自分には地理的な差は無いも同然だが、底釣り専用池ということで行くことはなかった。いや、むしろ避けていた。管理釣り場・釣り堀は冬場しか行かず、ほとんどの場合、底釣りしかしないので底釣り専用池でも良いのだが、底釣りに限るというルールが嫌いなのだ。これはメーター規制も同じだが、1m「以上」と部分的に制限している分だけ、まだ受け入れやすい。
 

「趣味の釣りくらい自由に楽しみたい」

 

と考えている。このように考えている人がどの程度いるかはわからないが、自由池へのニーズは結構あるのだろう。武蔵の池が全面自由釣りにしたが、近くにある弁天閣も歩調を合わせるように方向転換したことから、そのように考えてしまう。一部分だが、筑波流源湖は自由釣りにしたし、前山の池も狭山FC時代に底釣り専用から自由釣りに変えたと記憶している。また、前山の近くにある小さな釣り堀の平松へら鮒センターもオープンから自由釣りだ。逆に、底釣り専用池は太公苑、不動池、大門しか知らない (ただし、どの池とも釣ったことが無い)

 

 

 

この先、底釣り専用池は少なくなっていくのだろうか。

自由度が高まるという点で自分には好ましい話だが、その反面寂しいと思うところもある。それは「縛りのある底釣り」を知る人が少なくなり、最後、ヘラ師の中から忘れ去られてしまうのではないかと。

 

「縛りのある底釣り」と限定しているように、底釣りだからエサが底に着いていればOKというのではなく、ハリスの長さ、段差、鈎のサイズに制限を設けるものだ。例えば、喜楽沼だと、ハリスの長さは35cm以内、段差は5cm以内、鈎は4号以下というものだった (ような。うっ、記憶に自信がない…)。これら制限の理由だが、「ハリスの長さに制限を設けているのはヘラを浮かせて周りに迷惑を掛けないため」「大きい鈎はスレやすいのため」と教わった。そしてハリスの段差だが、これは完全に忘れてしまったが、それっぽい理由はあった。そして、共エサのときは、ヒットしたときに上鈎か下鈎のどちらを食っているか宣言して、外したら減点みたいな遊び方もあった。どちらの鈎か当てるのは偶然でしょと訝しがる人もいるかもしれないが、上手い人はピタッと言い当てるからコツはあるのだろう (ツンは上鈎、食い上げは下鈎に掛かることが多いと教わったが、そうとは限らないので、何かしらの調整が合っていなかったのだろう)。

 

 

ヘラが底から離れやすいときがあるが、この縛りだとハリスを長くしてヘラを上から引き込むといった手段は使えない。当然、エサだけで解決することは無理で、タックルも調整しなければない。複雑で手間がかかる分、ゲーム性は高くて面白い。口数が多かった昔だから成立した遊び方だったかもしれない。ちなみに、底釣り至上主義者の釣りを見ることがあるが、段差が広かったり、ハリスが長かったりする。エサが底に着いていれば良いというのは釣り堀育ちとしては中途半端だなと思ってしまう。

 

ただ、こういう遊びは仲間内や大会でやるから面白いのであって、レギュレーションにした途端に窮屈で邪魔なものになってしまう。少なくても自分はそうだ。だから自由化は歓迎する。

 

その一方で、釣果優先で特定の釣り方ばかりが残り、時期やフィールドによっては実現できる面白い釣りが忘れ去られていくなら、諸手を挙げて自由化賛成とは言いにくい。

 

どういうことか。


例えば、雑誌を読むと底釣りといっても、段底かバランスの底釣りだけで、ドボン釣りやハリスオモリなどについて丁寧に解説した記事に覚えがない。かなり昔に読んだ記事では、中通しのドボンではオモリが動くことでアタリが出るというのがあった。水中観察をベースにしたもので興味深く読んだ記憶がある。釣り堀ではドボンはやらないからオレには関係ないと思うのは自由だが聞いてみたいことがある。ヘラは吐き出すことなくオモリを動かすほどエサを離さずに引っ張るという事実に対して、どう考えるのかと。ヘラは吸い込んだエサを直に吐き出すとされているじゃないか。そうだとすると、ドボンで釣れるヘラは例外なのか、普通の底釣りや宙釣りで釣れるヘラと無関係なのか、と別の視点からヘラの生態を考えることができる。

やはり、多様化がヘラ釣りの裾野を広げることにつながると思っている。

 

一読して関係ないと思うことでも、他の問題のヒントになったり、役立ったりすることもあるのだ。そして、それを頭の中に納めるだけでなく、実現可能であれば検証することで、ヘラ釣りをより深く理解することができる。大概、頭の中の結論は現場で説明付かないものだから、頭ばっかり大きくなって本質が伴わないものだ。自分の期待を裏切って思いもよらないところに運んでくれるのがヘラ釣りの面白さの1つではないかと思うのだが如何だろう。

 

それでは、また。