前回は水温について書いてみたが、その続きになる。

 

再度、Wawasee湖における2020年の測定結果を下に示す。ここで、水温は摂氏に換算した値(℃)を括弧にいれてある。

 

 

まず、4月と11月を見ていただきたいのだが、水深が深くなるにつれて水温が下がっている。しかし、3月と12月はほぼ一定で、1月と2月は水深が深くなるにつれて水温が上がっている。

前回説明したが水温が4℃より下がるにしたがって水の密度は下がっていき (軽くなっていき)、逆に水温が上がっても密度は下がっていくという物性を良く反映している。

 

なお、この年(2020年)は1/20から全面凍結し、3/6に氷が溶けて無くなっている。1月の測定は凍結前とのことだが、2月の結果とよく似ている。湖面が氷で覆われることで風による対流が無くなり、より温度勾配は大きくなると考えていたが、深いところで差がある程度に留まっている。この差は有意だと思っている。

 

理解を容易にするために、ここまでの話を下図のようにまとめる。ターンオーバーが生じる温度が春と秋で異なっているが、湖に流入する水の量と温度、さらに風による対流により混ざりあったりする。

 

 

ただし、水温だけで魚(ヘラ)の活性や遊泳層を推し量るのは早計と考えている。例えば、酸素が無いところではヘラ鮒は生きていけないのだから。そこで、溶存酸素の測定結果を下に示す。

 

 

この中から色々なことが判るのだが、まずは各月の総溶存酸素量を考えてみる。冬場が多く、盛夏に向けて急速に下がっていくことは水に対する気体の溶解度から理解できる。下は水温に対する溶存酸素量を示したグラフだが、温度が高くなるにつれて酸素量は急速に下がっていることが見て取れる。この大きな減少が夏場の低酸素量を導いたと考えらる。

 

 

また、水深についてだが、夏場は水深の深いところでは酸素がほとんど無くなっていることが判る。湖への酸素供給が大気からもたらされると仮定すると、水面近くの酸素量が多く、深くなるにつれて減っていくことは、酸素分子が水分子とぶつかりながら湖底へと拡散する様子からも想像が付くだろう。また、湖底の方が水温が低いことからも理解しやすいともいえる。

 

しかし、それにしても差があり過ぎだろう、と思わないだろうか。そう、湖の水は純水ではないことを考えなければならない。つまり、酸素の供給源は大気だけではない。また、酸素を吸収するのもヘラだけではない。他の魚以外の要因もあるだろう。これらについては、別の事例で取り上げるつもりだ (多分)。

 

それから、表層から湖底までの水をかき回すターンオーバーは4月と11月の2回だが、溶存酸素からみると挙動に違いが見て取れる。4月にターンオーバーが起き、5月には水温躍層が観測されているのだが、水深が1mと11mでの差はさほど大きくない。また、6月になっても11mラインの酸素量は1mの半分程度と減っていない。一方、11月のターンオーバーでは湖底近く(21m程度)の酸素量は表層近く(1m)とかなり近づいていることが判る。つまり、酸素量からみると、春のターンオーバー後では表層、水温躍層、湖底層からなる三層を形成(成層ともいう)しても酸素量は大きく変化しないが、秋のターンオーバーでは成層が壊れると同時に、酸素量での層構造も壊れて上から下までキレイに混ざる。

 

水温と溶存酸素の変動について一旦抑えたので、次回は、日本の釣り場に目を向けて考えてみようと思う。

 

それでは、また。