「オーラって日によって色が違うらしいんですよ。
僕も紫だったり、透明だったりするらしいです。」




二人で開拓したオシャレなバーに
神戸娘と足繁く通うお宮。


その店がオープンしてから3週間の間に
6~7回は通っている常連さんだ。



二人とも自分たちのいきつけの店という意識が強く
神戸娘なんて

「もしも、友達とかと行くんであれば
事前に私に言ってよね!」


と公言している程だ。



素材にこだわり抜いた店なので
確かに美味いんだけど
一品一品のボリュームが少なく、且つお値段も結構なもんだ。


「お前ら、よく二人で行くよな~?。カップルって誤解されるで。」
とお宮を茶化すと



「いや~~~、僕も一人で行きたい時もありますし
出来ればそこで可愛い女の子との出会いも
期待してるんですけど・・・。
なぜか、神戸娘さんが
「ワタシも行く~~~」ってついて来ちゃうんです。」


遠い目をして言った。


おいおい・・・神戸娘からは
「私が一人でバーに行こうとしたらね、
お宮「僕も行きます」って言うてついてくるねん。」


って聞いてるぜ。



まっ、俺にとってはどうでもいい事なんだけどさ。




先日、マスターからお宮経由で聞いた
自分の出す赤いオーラとそれに混ざった黒色のオーラの
診断が気になり

「今日も行って来ます。僕らのために特別に
名古屋コーチン で親子丼を作ってくれるらしいので・・・」

というお宮の無邪気な言葉に

「俺も行くわ。」
と強引について行くことにした。



しかし、元々結構な料金を取るその店で
特別に作ってくれる『名古屋コーチン』の親子丼って
いったいどんな味がするんだろ?

値段もバカみたいに高いんだろうな~~~。
まさか2000円??

おいおい親子丼の値段じゃねーよ。それ。




そんな思いを抱えながら
店に入る。
あいにくと込み合っている。

「マスターってお客が多い時って
あまり僕らを相手してくれないんですよ。」
というお宮の言葉が頭をよぎる。


俺は親子丼を食いに来た訳じゃない。

オーラを診てくれぇぇぇぃ!!

と心で叫ぶ。


「いらっしゃい。」


あっ、マスターだ!
胸がキュンとなった。
いつの間にか俺の中では芸能人のような位置付けにいる。
こんな軽さが俺の魅力だ。


しかし立場上、そんな思いはおくびも出さない。
あくまで仏帳面を崩さす会釈するのみ。
「どうも。」



馴染みの神戸娘やお宮は
「今日、何かいい奴、入ってますか?」
「マスターのお奨めは?」
と屈託なく声をかける。


第二の家庭状態の彼らに比べ
俺といえばこの店に来た動機は「オーラを診て欲しいだけ」
そういう後ろめたさと生来の人見知りが入り混じり
俺は一人もじもじしていた。



「今日はマズイかも知れませんね~~。
忙しそうですし・・・オーラ診てもらえますかね・・・」
注文をした後、お宮がこちらに気遣ってくれた。



「お前、バカか?
俺が今日、何しに来たって思うとるんじゃい?
絶対診てもらうわ!」


お宮には強気の俺。
弱い奴にはとことん強いのも、また俺だ。



あれこれ料理が届き
何度となく「オーラ診て・・・」と言おうとするのだが
中々うまくいかない。


やはりダメなのか・・・。
おいおい飯を食うだけならラーメン屋行ってたぞ、俺は。



その時だ・・・
マスターが近くまで来たのをまたしても
神戸娘が見逃さず


「マスター、この人がどうしてもオーラ診て欲しいって!
どうですか?」


ありがとう神戸娘 (T_T)



マスターの俺の右斜め上を凝視して言った。



「・・・今日は・・・黄色・・・ですね

うん、黄色です。」




おぉぉぉぉ!!!!


「黄色ってどんな意味なんですか?」
このチャンスを逃さずまじ!



「黄色って『お金』のこととか『数字』のことを考えている時に
出やすい色なんです。

今、そういうことを考えていらっしゃるんではないですか?」



「お金」?「数字」?



正直、あまりピンと来なかった。


そしてそのまま深く聞くことなく
俺は電車に間に合うよう店を後にした。


その時のお勘定は6,000円だった。


また行くかは自分でも分からない。