うちの事務所が入っているビル
同じフロアに最近もう一つの会社が入ってきた。

IT系の新興企業だ。

エステ辺りに入ってもらって
キレイな女の子が百花繚乱・・・というシュチュエーションに
淡い期待をしていた宮●、チマチマからすれば

20代~30代の野郎ばかりが
「ギャハハハハ、マジっすか~。」
「今月数字やばいですよね~」
なんて休憩室でワイワイやってる状況には
怒りを隠そうとしない。


「何なんですかね?あいつら!」
「男ばっかりでうっとしいですよね~」
吐き捨てるように言う宮●に

眉間にしわを寄せてウンウンとうなずくチマチマ。



新興企業の営業マンだけに
どうせ使い捨てで入れ替わりも激しいのは
分かっているし、営業マンとして
奴等の苦労も多少分かっている俺としては
別に俺には関係ねー、そう思っていたのだが・・・


ただ一人、目障りな奴を発見した。

それが「丸メガネ」だ。


よその会社のことは言えないが
営業会社だけに殆どが中途採用。

そしてそこは社会人。
後から入社した人間はすべて後輩で
以前からいる先輩社員には年下だろうと何だろうと
「先輩!」的なマナーで接さなければならない。

俺も転職したら
自分よりすっげぇ年下の上司に
あれこれ指示を出され
場合によっては靴を舐めるくらいの勢いで
おべんちゃらも言わなければなるまい。
そのことを想像するたびにやや憂鬱になってしまう。



そんなタイミングで俺の目の前に現れたのが
丸メガネである。


年の頃は20代中盤だろうか・・・。
「さだまさし」をややふっくらさせた容貌に
きめの細かい白いもち肌。
メガネも今時見かけないダッサダサの丸いタイプ
という、もやしっ子だ。


しかし、こいつはこの入れ替わりの激しそうなこの会社に
結構、長くいて、且つそれなりの実績を出しているらしく
俺よりも年上の人間にも、横柄な感じである。


タバコの吸い方も、このルックスを見る限りでは
隅っこのほうでコソコソ吸って
ゴホンゴホンむせるようなひ弱なイメージしかできないのだが
ところがどっこい、この丸メガネのふかし方ときたら
大またを開き、口の端っこにタバコをくわえ
まるで哀川翔だ。


この前も休憩中に
こいつが後輩を集めて
「営業でスランプの時は、基本に返ることやで!」
「リズムなんてちょっとしたことで変わるからさぁ・・・」
「俺の場合はな~」
と、ふんぞり返って講釈を垂れていた。







フンフンと参考にしている
自分にも嫌気が差したが、

そもそもイモみたいな会社に就職した分際で、
少しぐらい営業が出来るくらいで
「俺は仕事がデキるんだぜ~~」的なオーラを出し
世の中のことなんて何にも分かっちゃいないくせに
「仕事とはなぁ・・・」と語る青臭さ。

しかも、自分の貧弱なルックスに
もう少しコンプレックスを持てば可愛いもんだが
椅子の座り方から、ふんぞり返りで
立ち振る舞いはもうなんて言うか社長さん。
その勘違い振りには昔の自分を見ているようで
近親憎悪みたいな感情がフツフツと湧いてくる。
あー殴りてー。


丸めがねが邪魔くさいのは
うちの女性陣も同じらしく

「マネージャー、聞いてくださいよ~。
あの丸メガネ、あんな顔をして
皮ジャンなんて着てるんですよ~~。
すごいキモい~~。」
とメッタ斬りだ。



学生時代はどう考えても
イジメを受けていたタイプだと思うし
俺が同級生だったら3日でこいつを登校拒否に追い込む自信はある。


しかしそこは社会人。
干渉は出来ないし、せいぜい態度で威嚇するくらいなもんで
フラストレーションが溜まりまくりだ。


今のささやかな願いは
こいつの営業成績が落ちまくった挙句
会社に居れなくなり
転職を思い立つも、いい会社がなく
ウチの会社に迷い込んで俺の下にでもついてくれることだ。

どんな艱難辛苦を与えようか・・・ケケケ。


丸メガネ、待ってるぜッ!!





    ルックスは西郷ドンでも、声は美しい宮●も黙っちゃいないぜぃ!