2ヶ月くらい前、急に尿意をもよおし
トイレに駆け込んだ。


俺にとってそのトイレは非常に愛着のある場所だ。


4月に転勤で人事がらみのゴタゴタに巻き込まれ
気が向いたら何も言わずにフラッとタバコ休憩に行ける今とは違い

どこに行くのも
誰かに監視されているような軟禁状態だったため
頻繁にトイレに行っては個室の「大」に入り
立ったままタバコを吸っていた。


トイレでタバコを吹かす不良の気持ちを俺は
32歳にして初めて知った。


そんな思い出の(と言うか今でもバリバリお世話になっているが)トイレで
気持ちよく小便をしながら、ふと「大」の方向を見ると
二つあるドアがひとつ閉じていた。


理由は言うまでもない。
誰かがクソをしているのだ。


それにしても・・・
普通はベルトをガチャガチャする音とか
「う~ん」とリキむうめき声
はたまた「ブピーッ」などど耳が腐りそうな屁の音
聞こえてもよさそうなものなのだが

全くの無音なのだ。
誰も入っていないような錯覚さえ覚える。


不審に思いながらも
事務所に戻り、パソコンのキーを叩く。
どれくらい時間が経っただろうか・・・
しばらくしたら、またしても尿意をもよおしてしまった。


「頻尿か?おいッ!」と心で突っ込みを入れながら
トイレに向かう。


10分かそこら前に行った同じ動作を繰り返し
オシッコをする。


そこに宮●が入ってきた。



「おう!」



「あっ、お疲れ様でーす。」



お互いにチ○チ○を出したままの挨拶
いつだって気まずい。


先に終わり、手を洗おうと洗面所に向かうその時
またしても「大」のドアは閉じていた。


相変わらず全くの無音・・・。


誰が入っているにせよ
息を殺しているに違いない。


しかし、なぜ?




その時である。
結構、長い時間ある人物の姿を見ていないことに気がついた。






ま・さ・か・・・



「なぁ、宮●くん・・・
最近の中○くんって格好良くないか?」




「ヘッ?どうしたんですか?いきなり」



こちらを向いた宮●に
薄笑いと共に閉まった「大」のドアをアゴで指し示す。


「・・・ニヤリ。」


一瞬のうちに状況を理解した宮●。


「・・・ですよね~、最近の中○さんってイケてますよ~。」
とわざと大きな声で返事をして来た。




その瞬間である。


ジョボボボボ~~~!!という水洗音と共に
開いたドアから青白い顔をしたチマチマが疲れきった表情で出てきた。



お疲れ様です。



口をポカーンと開けたまま
何事もなかったかのように手を洗うチマチマ。



結構、というかかなり長い時間をかけてクソをするその便秘体質
しかも全くのノー動作というか爬虫類のように静かなその排泄スタイル。


俺は色んな引き出しを持っているそんなチマチマが大好きだ。







    たとえこんな想像をされていようとも、だ。