「今日も一日頑張った、また休み明けな!」


にっこり笑って帰る仕事終わり。
俺とチマチマ男はオフィスビルに立っていた。


休み明けといっても、俺は当然出勤で
休むのはチマチマ男だけなのだが・・・。

営業マンとしては数字が構築できていない以上
「休日」という概念は持つべきではない。


「『営業マンに残業代がつく』っていうのが分からんわ、わし。」

これは廣島連合総長:カムサハムノダさんから教わった。
厳しいように聞こえるかも知れないが要はやればいいこと。
自分の待遇は自分で切り取る。

年上とは言えほぼ同世代の人の揺ぎ無い考え方に
当時の俺は大いに感じ入ったものだ。


あれから数年時代は変わったのだろうか?
「甘いんだよ!」と一蹴するのがチマチマさんだ。

彼の素晴らしい発想力で作りあげた「就業規則:12カ条」は
成果主義と年功序列が巧みに組み合わされた画期的なものだ。
れを実施できれば離職率に悩む会社は皆無になるだろう。
ご紹介しよう。


①勤怠は100%健全にとる。
 ただし自分のミスや落ち度でやむを得ず残業する場合でも
 気持ちよく残業が出来る環境を上司がつくること。


②昇格は年功序列。
 ただし結婚していなくなる率の高い女性については
 男性より不利にすること!


③しかし20代の若手を抜擢することを
 会社側は常に意識すること。


④報奨金はもっと多くして社員のモチベーションアップを
 心がけよ。


④結婚準備、葬式などやむを得ない状況においては
 無制限に休みを取れることとする。


⑤遅刻や早退には賞罰なし、また嫌味や叱責をした上司は
 部下のモチベーションを下げた罪としてペナルティを課す。


⑥業績が作れないのは上司の指導が悪い
 降格、減棒等の処置は上司が甘んじてうけること。


⑦通勤費は「徒歩」だろうと「自転車」でこれる距離であっても
 考えられ得る一番費用のかかる公共機関の乗り物代で支給する。
 (毎日往復でタクシーを使っているくらいの金額が望ましい)


⑧転勤した社員の昇給、昇格は、転勤しない社員よりも
優先的に実施する。


⑨仕事中のインターネット使用については
 自分の彼氏・彼女に関係あるのであれば無制限に使用可能とする。


⑩転勤した後に起こったクレームについては残った現場の人間が
 責任を持って処理する。転勤した当事者には連絡しない。


⑪社員の休日中に起こったクレーム等も現場の責任者が
 全力で対応し、当日社休を取った社員には一切連絡をしない。


⑫勤務中の喫煙および飲食については
 本人の自由意志を何よりも優先する。





どうだろうか?
いつの日かチマチマ男が企業を興した時は
是非、面接に行こうと俺は思っている。


そんなことを想像しながら
チマチマと別れようと背中を向けた刹那・・・


ん?」と小さな声でつぶやいた。


振り返ると、奴の通勤用のチャリ(身体に似合わず馬鹿デカイ!)の
前カゴの中に誰かの捨てた空き缶が入っていた。



黙って拾い、ごみ箱に入れる訳でもなく
丁寧に道路上にそっと置き去りするチマチマ。

怒りで青ざめた顔とプルプル震える背中に
白い炎をみた。


小さい・・・。本当に・・・。