大抵の人と同じように俺も大学時代
アルバイトをしていた。


最初はコンビニ。
   ↓
次は焼肉屋さん。
   ↓
その次も阪神大震災で潰れてしまった焼肉屋さん。
   ↓
そして最後はパチスロのサクラのバイトだ。



一番割が良かったのがパチスロのサクラのバイト。
一番よくなかったのがコンビニのバイトだ。



結果としてこんなバイト歴で終わってしまったが
有り余る知性を生かしての
家庭教師のバイトが一番の希望だった。


芦屋あたりに住んでいる
素直で美人の女子高生あたりに英語を教え
上品なお母さんの手作りのケーキをおやつに頂き
志望校に合格させた暁には時給とは
別にご褒美で車なんぞを買ってもらう・・・。


しかし、あらゆる家庭教師派遣会社に登録したものの
卒業するまで一度たりとも声がかかることは無かった。


そんなコトは今さらどうでもいいが
コンビニ時代の失敗談を書きたい。


俺の通っていた大学 は高台の上にあり
住んでいた下宿もその近くにあった。

バイト先のコンビニ(ファミリーマート)は
うっとおしいコトに坂をおり切った駅の近くに位置し
当時、チャリンコしか持っていなかった俺としては
行きは下り坂なので余裕だが、帰りはヒィヒィ言いながら
チャリを押して帰る、そんな毎日だった。


今でもそうだろうが深夜にでも入らない限り
時給も安く、たとえ賞味期限切れの弁当を貰ったとしても
あまり満足いく環境では無かった。


その上、おいしい家庭教師のバイトにありつくまでの
つなぎのバイトだと思っていたので、モチベーションも低く、
いつもお客なんかそっちのけで
他の大学生バイトとベラベラおしゃべりをしていた。


しかしそんな俺でも一つだけ注意していたことがあった。
それは「万引き」だ。


以前にも書いたように俺は万引き中学生だった。
今でも会社の備品をパクっているであろうまっさんとは違い
俺はその方面から足を洗っている。


反省した分、同じことをやる奴に対しては
敏感になっていたのかも知れない。


当時もしっかりと監視カメラが店内には設置してあり
バイトの連中が着替えをしたり品だしをする控え室には
何台ものモニターが暗がりの中、青白く光っていた。


しかし中学生当時
難攻不落の古川書店で万引きに成功し
「名人」と称されたこの俺としては
監視カメラだけで万引きを防ぐには
心もとないことは十分に承知していたので

中高生の集団や、小汚い身なりをした男女、
キョロキョロと挙動不審な客には目を光らせていた。


当時、俺を雇っていたコンビニのオーナー夫婦の目には
「おしゃべりばっかりして仕事をしないダメ学生」と
映っていただろうが

レジを打ったり、品だしをしたり、掃除をするだけが
コンビニ店員の仕事ではない。

万引きを未然に防止することでその店の利益を守る、
そんな崇高な使命感を持っていたのが当時の俺だ。


しかしそんな立派な俺でも
たまには息抜きをしたい瞬間だってある、

休憩時間に控え室にこもり、商品の漫画を読みながら
誰もいないのをいいことに鼻クソをほじっていたら
ふと、モニターが目に止まった。



「!?」



たくさんあるモニターの一つには
鼻の穴に指を入れ、ある方向を呆けた顔をして凝視している俺が
ハッキリと映っていた。


万引きは客だけではなく
アルバイトだってするかも知れない。
控え室にカメラをつけているのはそういう意味だろう。



基本的にビデオ録画をしているそのモニターは
オーナーのおっさんが定期的にチェックしている。



俺は自分が鼻くそをほじっているスクープ映像が
気になって仕方が無く、その後しばらくしてそのコンビニを辞めた。



辞め方も乱暴で
オーナー夫婦に顔を合わせづらかったので
最後のバイト代は当時、名古屋の大学に通っていて
泊まりで遊びに来ていた
サコッペに取りに行ってもらった。