仕事の合間にタバコに行く。
紫煙を曇らせながら、しばし思考に入る。
タバコを吸っている瞬間は俺だけの時間だ。
こちらからお願いしなくても悩みのほうから
ベルトコンベアーに乗ってやってくるような気苦労の多い日々。
いつの間にかタバコ依存症になっている。
そんなホッと一息の邪魔になるのが
毎日聞こえてくるオッサン同士の会話だ。
俺のオフィスのあるビルは
B1と1Fが吹き抜けのエントランスになっており
1Fに奴らは、いる。
いつも「あーでもない、こーでもない」と話し合っている。
そしてそれが下の階にいる俺に丸聞こえ。
一人は帽子をかぶり
クシャおじさんを
醤油で煮詰めたようなルックスで
モロ日雇いの仕事専門ですという歳の頃50過ぎのジジイ。
もう一人はツルンとした顔に頭はやや薄くなり、メガネをかけた
どこかの商店街のオヤジ風の40代。
どちらも無職らしく、若いモンは職があるけど我々は・・・
政治が悪い、弱いものイジメだ、日本の経済は・・・
侃々諤々やっているが
何かトンチンカンなんだよな。
ある日の会話
「アメリカ言う国はデカイのぉ」
「ほんまじゃのう」
「アメリカにゃ「州」言うもんがあるんじゃろー?」
「そうじゃ」
「どれくらいあるんじゃろうか?」
「100はあるじゃろー」
「そうかー」
このようなぬるーい会話が展開されている。
どちらかが質問し、どちらかが答えるというパターンだ。
俺の人生には全く関係ない二人だし大きなお世話かも知れないが
もう少し小さな声で話した方がいいと思う。
高校時代に通っていた塾で
「誰かと、ある話題について会話をしている時
その話題についてよりよく知っている人が近くにいるものだ」
という意味の英文を訳させられ、
当時はその文章の真意が今ひとつ分からなかったが
今になって少しだけ分かったような気がする。
みんな、良く知らないことでも
知った風に話すのが好きなんだな。
何となく聞いたことを何となく話しているだけ。
自分の仕事とかに関することは知っていても
それ以外のことなんて大して知らないもんな。
だから
中学生か高校生の時に上映された映画
「バットマン(BATMAN)」の題名の意味を友達に聞かれて
「しかし男 (BUT MAN) 言う意味じゃろ。」
と偉そうに人に教えていた「なま」こと、橘高直之クン。
恥ずかしいなんて思わなくていいぞ!
みんなそうだからさ。