愛してるで。 | Rebuildinging

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お気楽わがまま可愛い旦那と
陰湿マイナス思考二重人格妻

そして…、母と妹が病室から出て、たった20分後…、父の呼吸が乱れはじめた。


よかったなぁ、最期にSに会えて。ほんま、しぶとくしといてよかったなぁ、うちも心配しとったんやで…
私はそんなことを呟いていたと思う。

あぁ、O先生呼ばなあかんかな、でも、もうあと死ぬだけやし、このままでもえぇかな…
母と妹はまだ家にも着いてないやろうし、もともと連絡する気もあんまりなかったし、母のことやからあぁは言ってもメチャクチャな運転しよるやろうし、危ないし、連絡せーへんでもえぇかな…
でも、ここまで父を看た母やから、やっぱり最期一緒に送りたいかなぁ…

なんて思っていたところに、しばらくして偶然O先生が入ってきた。
O先生は、どうですか、と言った。
私は思い出したように、あ…なんか、呼吸が…、と言った。
O先生は父を見て、お母さんに電話したほうがいいです。と言った。

そうだよね、お母さんに電話しなきゃだよね…、そうに決まってる…。


母を刺激しないように、ちょっと、呼吸がおかしいから、あぶないから、先生が来てもらったほうがいいって…という言い方をした。
母は、すぐ行く‼︎と言うので、ぶっ飛ばしてもいいから、ただ安全運転で来てくれ、事故ったら洒落にならん、と添えた。
まぁ本当に、冷静だった。





もう父にかける言葉は、

がんばれぇ、がんばれぇ、

だけだった。
何を頑張るんだよ、というツッコミをいれながら、冷静に、がんばれぇ、がんばれぇ、と、呟き続けた。

ちゃんと、見てるで、あんたが逝くとこ、ちゃんと、私が見てるで、今までがんばってたのも、全部、私がみてるから、安心しぃやぁ、

悪いことしたり、人にいっぱい嫌なことしても、最期には娘がちゃんと看取るねんでー、ちゃんと、許してるで。救われてるで。天国に、行けるで。安心しぃやぁ、

やから、最期、がんばりやぁ、ちゃんとみてるでぇ、

がんばれぇ、がんばれぇ、がんばれぇ、


手を握り、抱きしめ、額にキスを。
歌も、歌う。今まで、目の前で歌ったことなんて、あったかいな…

ほんま、親不孝で、ごめんなぁ…。





呼吸の感覚が、広がる。
ゆっくり息を吐いて、思い出したように、ほんの少し空気を吸う。
思い出さなくなったら、終わり。

がんばれぇ、がんばれぇ、

また、吸った。吐いた。
…今度は、吸わないかな?
おっ、吸った。ゆっくり吐いた。
また、吸った。吐いた。

がんばれぇ、がんばれぇ、がんばれぇ、

父の手が折れるんじゃないか、いやいや折らないように、でも力いっぱい、あんたは天国に行くんやでぇ、行けるようにうちが力を貸してるんや。
がんばれぇ、がんばれぇ、

思い出したように息を吸う。ゆっくり吐いた。

その瞬間を、絶対に見逃さないように、瞬きもできなかった。
そんなことは気にならなかった。

絶対看取る、絶対看取る、うちが看取る、安心してくれ、うちが全部見とるからなぁ、   

がんばれぇ、がんばれぇ、見とる、見とるでぇ、ちゃんと、見とるでぇ、

あんたが死ぬところを、私がちゃんと見とる。

がんばれぇ、がんばれぇ、その瞬間にむかって。





思い出したように息を吸う。

ゆっっっくり、ゆっくり、すべての息を吐き出した。

思い出したように、      、吸わなかった。


呼吸が止まった。まだ終わりじゃない。心臓が動いている。

息をしてないとは、思えないくらい、力強く、動いている。
父の身体は熱い。
命が燃え尽きようとしてる。

最期まで、見てるで。
がんばれぇ。



母と妹が来た。

『パパっ‼︎』
と、母は叫んで、駆け寄った。


もう、息、してへんねん…。ちゃんと、うち、見とったで…。と、私は言った。疲れていた。母と妹が来て、ホッとしていた。やはり一人では、荷が重かった。背負うつもりだったけど、父の命は、思っていたより、重かった。




がんばれぇ、

がんばれぇ、がんばれぇ、

母の掛ける言葉は、不思議と私と同じだった。

妹は、少し離れたところから、見ていた。


心臓は、びっくりするほど、動き続けた。
呼吸が止まってから、30分くらい。
普通がどんなものなのかわからない。
O先生に聞くと、
いや、長いです。まだ、お若いし…、心臓が、元気なんでしょうね。
とのことだった。


あ、もう心臓、動いてないなぁ…  と、みんなが思っていたところで、

2月24日、5時40分、ご臨終です。

と、O先生が言った。




母が、

あ、切りがいいんで、5時45分にしといてもらえませんか。パパも、その方が喜ぶと思うし。

と言った。


母と、私たと、妹も側に寄ってきて父を囲んだ。

よく、がんばったなぁ、





愛してるで。