今夜がヤマ、と言っていたが、とりあえず父は持ち直した。…とも言えないが。余命3日くらいじゃないか、とのことだった。
いつ死ぬかわからない。
病院に直接行けない。まだ会う決意をしてないからだ。
帰ってきたことを母にも言っていない。
いつ死ぬかもわからない父親に会いに行けない。
少なくとも職場の人に、父が死にかけてるのに帰省しない冷たい人間、と思われることは避けられたはず。
とことん甘えていた。母が戻ったら相談しよう、と。どんな状況か、話を聞いてから…。
父が、いつ死ぬかもわからないのに。今にも、死ぬかもしれないのに。
一切の予断を許さないはずなのに、現実感もなかったんだろう、この時、未だに。
母が戻った。
会いたくないなら、会わないでいい。
Fから、明日戻ると連絡があった。
じゃあ、明日、Fが帰ってきてから、となった。いつ父親が死ぬかもわからないのに。
翌日、兄が戻った。
兄も、迷っていた。
会うか会わないかは別にして、とりあえずみんなで病院に向かうことにした。
妹は、状況を全て知っているが、帰ってこないということだった。
病院に着き、病室の外から中を窺う。
予め母から言われていた、胃ガンだったのでとにかく痩せてしまい、会っても一瞬誰だかわからないだろう、と。
確かに、ガリガリの知らない老人が寝ていた。
母が病室に入りその老人と話すのを、私と兄は病室の外から泣きながら見ていた。
その日は、会わずに終わった。
父がいつ死ぬかもわからないのに。今にもしにそうなのに。目の前で死にかけてるのに。