私は人に対しての「好き嫌い」をほとんど持ち合わせていないかもしれない。「波長」が合いさえすれば良いのだ。だから見てくれが怖そうな人でも「波長」が合いさえすれば全く大丈夫だ。昔から、いわゆる「不良」とレッテルを貼られた奴らとも、結構仲が良かった。ただ母が昔から言っていた「人に泣かされても眠れるが、人を泣かせたら眠れない」という言葉がいつしか私の心の中に根付いているせいか、「人の心を傷つけそうな雰囲気」をかもし出す人は自然に避けている。
華やかな入学セレモニーが緊張感の中で終わり各々がほっとした表情で外に出ると、いつかテレビで見たことのある「新入生歓迎のセレモニー」が華やかに繰り広げられていた。各サークルや各部活動のチームのきれいどころや、イケメン部隊が勧誘員となり、「我が部へどうぞ〜。我がサークルはいかがですか〜」と満面の笑顔で、パンフレット片手に、プラカード片手に襲いかかってきた。当然の如く、私と「馬場君」にも二人の大人びた女性が近づいてきた。「馬場君」は一目散に逃げた。逆に私はニコニコしながら彼女たちの勧誘を楽しみながら受けた。彼女たちは「ザ・ピーナッツ」の如く揃った口調で「マンドリンってご存知ですか〜」といきなり言った。「マンドリン?」あ〜、あの、古賀政男さんの、と、頭の中でうる覚えながら浮かべていた。「先程のセレモニーの入場曲、我々マンドリン倶楽部の演奏なんです。」とにこやかに言った。「もしご都合宜しければ直接触れてみませんか?」と又、「ザ・ピーナッツ」の口調で言った。
「とりあえず、考えておきます」と苦笑いをし、「馬場君」の如く逃げるようにその場を離れた。
「未だ右も左も分からない状態で部活なんて未だ時期尚早だよ。」天の声が聞こえてきた。「女に惑わされるな。」心の声も聞こえてきた。