「アルコホリック」になった心大は、否認し、抵抗を繰り返したが、困り果て、疲れ果てた家族に懇願され、ついにはこの病院にお世話になることになったのである。

 しかし幸いなことに、元々生真面目な人間である彼にとっては、此処での呆れるほどダラダラ生活は、本来の自分を取り戻すには充分すぎるくらいの刺激があったみたいだ。

 此処には「なりたくない大人たち」が沢山いたわけで、「あんな人達と同類」に見られるのは嫌だという思いに潰されそうな感覚に襲われたわけである。何日か悩んだあと彼はとにかく自分の身体ををいじめるがごとくがむしゃらに走り始めたらしい。

 勿論のこと、ここでは酒は呑めない。仕事をする必要もない。時間は有り余るほどあるわけだから、彼がその無駄な時間を身体を鍛えるという「日課」として選んだ事は賢明な判断であった。

 そしてあの「危険な臭いのする坂道」は必然的に我々の「出会いの舞台」になったわけである。