ヴェリルは優しく、諭すように続けます。


「取り返しのつかないことをしたと、反省してもらいたい。もしも、ユアンの気持ちが手に入らなくとも、自己満足にひたることで彼を苦しめるのはいけないことだ」


「せっかく彼の気持ちがリゼルさんに向いているところを、別の方向へ行ってしまいますよ。まっすぐな愛情が一番嬉しいでしょう?」


マクシミリアンがちらりと視線をやると、そちらからユアンがやってきました。


「店長、ここを辞めたいんです」


「辞めてどうするつもりだい?」


ユアンはマクシミリアンの隣にいるヴェリルを見て、驚いたように目を丸くしました。


「先生のところへ……行くつもりでした」


「私が何もしないと言ったら、どうするんだい?」


「リゼルを連れて、旅に出ます。魔法を勉強しながら、力になってくれる魔法使いを探します」


「君は一生を、彼女への救済へあてると言うんだね。それが償い? そこまでしなくてもいいのでは?」


少し意地悪な言い方をするヴェリルに、ユアンは姿勢よく顎をあげて、はっきりとこたえました。


「いえ。それが僕の役目です。僕はリゼルの……婚約者ですから」


(ああ、ユアン!)