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それから、リゼルの意識はぼやけていきました。眠るのでしょうか。人形も、人と同じように眠るのでしょうか?
リゼルは目を開いたまま、ぼんやりと音を聞いていました。
ユアンがどこかへ行くようです。マクシミリアンのところでしょうか。
ヴェリルのところへ行くのかもしれない……と思いました。自分を助けるために。
(……私は……このままでいいのに……)
「リゼル、一分間の夢は、けっこう長かっただろう?」
「彼女はまだ酔っていますよ。自分の夢に」
「女の子はナルシストで困るね」
そばで、ヴェリルとマクシミリアンの声がします。急に、目が覚めたような、はっきりとした感覚を受けました。
「リリアナは、私たちにも挨拶にきてくれたのだよ。そのときに、君とユアンのことを心配していた。間違った道を進まないように、気を配ってあげてくれと言われたんだよ」
ヴェリルはリゼルの頭をそっとなでて、穏やかな声で続けました。
「この姿はそんなにいいかい? 人として、ユアンと一緒に生きていくほうが、何倍もいいと思うけどね」
今度はマクシミリアンが、説明するように話し出しました。
「私が預かった、リゼルさんの中にある、ユアンが盗んだ時間──約一分ですけれどね、それを、使わせてもらったんですよ。ヴェリルさんがどうしてもユアンにおしおきをしたいと言うので、リゼルさんにも協力してもらったんです。あなたも、危険な考えをお持ちのようでしたのでね」
彼らは、リゼルとユアンの二人に、軽いおしおきをしたのだと言いました。