エピローグ



「店長、外の仕事は終わりました」


「ありがとう。では、商品のほこりをはらって、陳列の乱れを直してくれるかな?」


「はい」


ユアンとマクシミリアンの会話を聞きながら、リゼルは考えていました。


──今、私はリリアナになっている。リリアナという人形になっている。

動けないし、話せない。けれど、見ることはできる──


しばらくは、ただぼんやりとしていました。ユアンの近くで、彼の姿を見ていられるということに、満足していました。

それでも、やはり不便さを感じます。だって、視界に入るものは見えますが、そこから外れると見えないのですから。


──ユアンが見えない。


(ユアン。ユアン。ここにきて。話しかけて。笑って)


リゼルは祈ることしかできませんでした。


どのくらい時間がたったのでしょうか。やっとユアンがきてくれました。


「リリアナの髪が乱れているな」


ユアンは親指と人差し指でちょいちょいと人形の髪を直して、しゃがみこんで下から顔をのぞきました。


(嬉しい。こんなに近くで顔が見られるなんて。少し恥ずかしい気もするけど、今の私なら、動けないことを理由にして、顔を見返せるわ)


綺麗な顔だと思いました。こんなに綺麗な男の人を、見たことはありません。リゼルはユアンの顔も、声も、後ろ姿も、すべてが大好きでした。