マクシミリアンが魔法使いだと知り、リゼルは「そんなような気はしていたけど」と思いました。
「わかりました。私が責任をもって管理いたします。リゼルさんは何も心配することはありませんよ。あなたは今までと、何も変わりません」
リゼルは考えました。マクシミリアンがユアンを助けたのは、偶然ではなかったのかもしれない。
ユアンが知らない世界で無意識に助けを求めて、それを察知したのでは?
ユアンが魔法使いだと、わかっていたのでは?
無意識に、ユアンが悪いことをしないように見ていたのでは?
(じゃあ、リリアナという人形に、リリアナの魂が入っていると……最初からわかっていたということも……ありえる……? 私の中にあるという、小さな魔法のかけらにも、気づいていたのかも……)
マクシミリアンはリゼルを見ていました。彼女の考えていることがわかるかのような、意味ありげな視線に、リゼルはドキリとしました。
彼はわざとらしく腕時計をちらりと見て、声を張りました。
「あまり帰りが遅くなると、リゼル嬢のご両親が心配されます。彼女だけでも帰したほうが……」
「いやよ! こんな中途半端に一人だけで帰れないわ!」
「では、続きは後日にでもいたしますか」
ヴェリルはユアンに言います。
「私はもう少しここに残る。君のお兄さんに会って行くよ。君は……ガルデニアに帰るんだろう?」
「はい」
「帰り方はわかるな? 任せる」
ユアンのお兄さんの幸せを確かめ、弟の無事を伝える。ヴェリルにはまだ、ここでの仕事があるのでした。
記憶を取り戻した魔法使いユアンは、リゼルたち三人をつれて、もとの世界へと飛び立ちました。