「さて、天使に選ばれた少女リゼルよ。君はどうしたい?」


天使とはリリアナのことでした。リゼルの中には、まだリリアナの気持ちが残っています。


「リリアナは、天界に行くことを望んでいるようよ。ユアンには、前に進んでもらいたいって」


「でも、僕は兄さんのために……」


「ユアンのお兄さんは、今でもリリアナのことを思っているの? 忘れられないのはユアンでしょ?」


彼は顔を上げると、リゼルの目をじっと見ました。

リゼルはひるみました。きついことを言ったかもしれない。嫌われるかも。でも、ユアンには幸せになってもらいたい。


「……兄さんは、去年結婚した。今さら兄さんとリリアナをくっつけようとしたら、義姉さんを不幸にすることになる。……そんなことも、僕はわからなかったのか」


自分を責めるように言うユアンですが、リゼルにはそれは「理由」なのだとわかりました。本心は、やはり自分がリリアナに、そばにいてほしかったに違いないのだと。


「リリアナのことは、彼女の迎えの天使に任せよう。では、ユアン。リゼルの中にある、盗んだ時間はどうする? 自分で返していくのか?」


「はい……。毎日、一秒ずつでも返せば、それほど問題はないかと……」


リビアンが「それはどうかな」と口をはさみました。


「俺が気づいたみたいに、気づくやつがいないともかぎらないし」


今度はマクシミリアンが「そうですね」と同意しました。


「リゼルさんに害がないのなら……一分くらいなら、何かのためにとっておいてもいいのでは? ここぞというときに、使える一分は重宝しますよ」


ヴェリルは何も言わず、マクシミリアンを数秒見つめました。


「では、時間の管理は君に任せよう」


「私が?」


「ガルデニアの魔法使いは君だからな」