石碑にはリリアナの名前があります。そして、その前で涙をこらえているのは、少年のユアンでした。


これは過去の幻影なのでしょうか? 現実の大人のユアンは、過去の自分を見つめていました。


リリアナの気持ちが、リゼルの中に入ってきます。


(ああ……、リリアナは、病気で亡くなったんだ。苦しまなかったことが救いだったと、喜んでいる)


ただ、悲しいのは……もうユアンのそばにいられないこと。

一緒に魔法の勉強をしているのは、とても楽しい時間でした。

魔法使いとして、人の役に立つことをするのが夢でした。

ユアン、立派な魔法使いになってね。


(リリアナは十六歳で亡くなったんだ)


リゼルはリリアナの気持ちに同化して、泣きたいような気持ちになっています。


リリアナはこの地で大好きな人々を見守り、納得して、天界へと旅立とうとしていました。


大人になったユアンは、魔法使いと呼べるようになっていました。彼はリリアナが亡くなった過去の世界へ行き、魔法の力で彼女を救おうと考えていました。


『過去を変えるなんて、いけないことよ。諦めて、ユアン!』


『いやだ! 僕は諦めない!』


ユアンのしようとしていたことを察知したヴェリルは、なんとか阻止しました。

その衝撃で、ユアンを止めたかったリリアナは人形になり、ユアンは記憶を失って、二人はガルデニアへと飛ばされたのでした。


『この知らない世界で、新しく人生をやり直すのもいい。穏やかに生きていくのならば、私は静観しよう』


ヴェリルは二人を見守るつもりでいました。