「守護霊ってこと?」


「天使とも言えるし、精霊とも言えるし、あらゆる不思議なのよ」


それなら姿を変えることもできるし、夢の中に出てくることもできるでしょう。

リゼルは納得しましたが、どうしてルチルには人の姿を見せないのに、自分には見せてくれるのかがわかりません。


男の子のヴェリルは、ルチルのまわりを行ったり来たりしています。


「ちょっと! 何してるのよ?」


気配は感じても、やはり姿は見えないようです。


「でも、声は聞こえるんでしょ?」


「う~ん。普通にこうやって会話をするわけではないの。感じるっていうか。……私の妄想だと思われても、しかたないんだけど」


「ううん! わかるわ!」


二人の会話を聞いて、ヴェリルはくすっと笑いました。


『ルチルは人間にしては勘がいいから。僕が意識を向けると、すぐに気づいてくれるんだ。それが面白いから、ときどき話すんだよ」


「だったら、その姿も見せてあげればいいのに!」


リゼルが声に出すと、ルチルはびっくりしたように目を見開きました。


「ヴェリル、なんて?」


「う、うん……。ルチルさんと話すのは、面白いって」


「あら、そう」と言いながら、ルチルは目を凝らして、少し外れたところを見ています。


『僕が君に姿を見せたのは、面白いことが起こりそうだからだよ。君はただの女の子ではなく、選ばれた子だから』


選ばれた? 誰に?


『天使に』


「でも私、天使の姿は見えないわ!」


「なんなの? ふたりだけで話してないで、私もまぜてよ!」


ルチルは子どもみたいに、感情をむき出しにして叫びました。


「あ、ごめんなさい。どう言っていいのか、私にもわからなくて」