5 ガルデニアの精霊



リゼルは学校帰りの午後、中央公園でルチルとヴェリルを探しました。


この間のベンチには他の人が座っていたので、その近くを探しましたが、ふたりの姿は見えませんでした。


「今日は来てないのかな……」


話したいことがたくさんあるのに。

中央公園は広いので、見つけるのはちょっと大変です。


諦めきれずに歩きまわっていると、どこかで見たことのあるような男の子が、近づいてきました。


白っぽい髪の毛、金色の目……。夢に出てきた子のようです。


まさか……という思いもありましたが、彼の後ろからルチルが歩いて来たので、やっぱりそうなんだ! と思いました。


「ルチルさん……。ヴェリル……」


「え?」と、ルチルはきょろきょろしました。目の前にいる男の子がヴェリルだとは、気づいていないようです。


人間の姿をしたヴェリルは面白そうに笑うと、リゼルの隣に立って、同じようにルチルと向き合いました。


「どこかにヴェリルがいた?」


ルチルはここに、目の前にヴェリルがいるとは思わないようです。猫の姿ではないからでしょうか。


『彼女に僕の姿は見えないよ。見せてないからね』


リゼルの頭の中に直接語りかけてきた声は、夢の中で聞いた声と同じでした。


(あの夢って? 夢ではなかったの? それとも、私の夢の中に入ってきたってこと?)


リゼルは声も出せずに、男の子を見つめました。ルチルはその様子をおかしく思い、目を細めるようにして、ヴェリルのいるあたりを見ました。


「そこにいるのね。ヴェリル? ヴェリルでしょ?」


「ルチルさん、本当に見えないの?」


「……てことは、リゼルには見えるのね。やっぱり目がいいのね。──もう! 気配はするから、探しまわっていたのに!」


「え? ヴェリルは、ルチルさんの猫じゃないの?」


「違うのよ」と言いながら、ルチルは人のいないベンチを指して、そちらへ移動しました。


「猫のヴェリルとは、この公園で会ったの。毛並みの色もそうだけど、金色の目といい、どこか普通の猫とは違う気がして、観察していたのよね。そうしたら、語りかけてきたのよ」


ヴェリルはこの都市を見守っている、霊的な存在なのだと、自ら話したとのことです。