4 クリスマスプレゼントの予約
リゼルはママと一緒に、雑貨店『虹色の羽』に行ってみました。
ドアの前で、店長であるマクシミリアンが、お客様を見送っているのが見えました。
彼はリゼルたちに気づくと、軽く会釈をして、そのまま待っていてくれました。
「こんにちは」
「こんにちは、リゼルさん。リリアナのおねだりに、成功しましたか?」
大人二人は、自己紹介をしあいました。お天気の話なども出たところで、リゼルは長くなりそうだなと、先に店内へと進みました。
ユアンはリゼルに気づくと、にこやかに、まっすぐに歩いて来ました。
「リゼル、思い出したことがあるんだ。僕は一週間ほど前に──」
「思い出してくれたの!? 嬉しい!」
リゼルは飛びつくような勢いで、彼の腕に手をかけました。
「あ、ごめんなさい」
ユアンは「いや……」と、少し照れたように笑いました。
「君は最初から、僕に気づいてくれていたんだね」
「そうよ。忘れるわけないわ。命の恩人だもの」
「恩人て……大袈裟だよ」
ちっとも大袈裟なんかではありません。リゼルはママに話すと、ぜひお礼を言いたいと、それでさっそくここへ来たのですから。
(まあ、ママは、綺麗なレースに心を持っていかれちゃったようだけどね)
「ママと来たんだね。……リリアナを買いに?」
ユアンの顔が曇ったのを、リゼルは見逃しませんでした。
(彼にこんな顔をさせたくない。私がリリアナを買ってもらったら、彼はどうするかしら?)
諦める? それとも、執着する? リリアナを? 私を?
──彼との接点がほしいなら、リリアナを──。
ヴェリルの声が聞こえました。悪魔にでも、そそのかされたような気がします。
リゼルが口を開く前にママがやって来て、ユアンに話しかけました。
「まあ、あなたがユアンさんね。先日は娘を助けていただいて──」
一週間前のことを、二人は話しています。
リゼルはリリアナのところへ行き、そっと両手で持ち上げてみました。
リリアナのドレスが広がるようにして、下へさがります。銀色の巻き毛やエメラルドの瞳は、そのまま動きませんでした。
重いわけではなく、軽いわけでもありません。人形としての彼女が、ここにいるだけです。