2 『虹色の羽』
雑貨店『虹色の羽』は、中央公園から駅へ向かう途中の、細い道を進んだところにありました。
蔦のからまった、白いレンガのお店です。ドアのそばには、クチナシが咲いていました。ほかにもアジサイやアガパンサスなどの、ブルーや紫のお花が綺麗です。
大きなショーウィンドウからは、中をのぞくことができました。装丁の綺麗な本、カラフルなボックス、ぬいぐるみやお人形が見えます。
ショーウィンドウには、アクセサリーや食器類が並んでいました。
高そうに見えたので、リゼルは子ども一人で入ってもいいものかと考えました。
(でも、せっかくきたのに)
(ちょっと見るだけのつもりだったんだから、今度ママとこようかな)
(でもでも、もしかしたら、今日、一生の出会いがあるのかもよ……?)
リゼルはぐるぐると考えて、ドアの前で行ったりきたりしていました。すると、ドアが開いて、中から背の高い男の人が出てきました。
「いらっしゃいませ。中へどうぞ」
チョコレート色の長い髪を、そのまま背中に広げた、まだ若い男の人です。メガネの奥の瞳はグレーにも紫にも見えます。優しい目ですが、見つめられると、何もかもを見透かされてしまいそうな印象を受けます。
その人の不思議な風貌に、リゼルはかたまってしまいました。
「大丈夫。怖くはありませんよ。招待状をお持ちのお客様には、お茶のサービスをしております。お菓子もおつけしていますので、どうぞ?」
彼はリゼルが持っているレースの封筒を指さして、片目をつぶって見せました。
「ユアン、お客様です。お茶をお願いしますね」
「はい、店長」
この人が店主のマクシミリアンでした。
ユアンと呼ばれた人も、スラリと背の高い男の人でした。やはり髪が長く、明るい金髪を、首の後ろでリボンで結んでいました。
リゼルはその背中になぜかドキドキして、顔を見たいと思いました。
──さっき一言だけ聞いた声──あの声は──。
彼はすぐに行ってしまったので、リゼルはしかたなく店内に視線を移しました。
アンティークな燭台、時計、ペーパーナイフなど、物語に出てくるような綺麗なものがたくさんあります。
刺繍のレースは、ママが好きそう。やっぱり今度、ママと一緒にこよう。
そんなことを考えながらテーブルのまわりを歩いていて、リゼルは吸い寄せられました。
銀の巻き毛のお人形。グリーンのビロードのドレスを着て、赤いバラのついたヘッドドレスをつけています。瞳はエメラルドです。
「綺麗……」
そこから、動けなくなりました。