ある夜、妖精の女の子エグランティアが、私にステキな魔法をかけてくれました。


「今夜は満月よ。私の魔法も強くなるの。だから、アンリエット一人くらいなら、飛ばせられるわ」


飛ばせてくれるの?


エグランティアは呪文を唱えて、まずは私を自分と同じくらいに小さくしました。


「えっ!? 待って待って! 可愛いお洋服を着たかった!」


そう言うと、「じゃあこんなのはどう?」と、着ているものを、淡いラベンダー色のドレスに変えてくれました。ふんわりとした生地で、くるくる回ると、開いたお花のような印象です。


「わあ! ステキ!」

「そうでしょ?」


ついでに、髪型まで変えてくれました。ふんわりとしたアップに、リボンと小花をつけてくれて。

背中には、薄い羽。妖精の証です。


同じサイズになると、エグランティアの瞳がブルーグリーンの色をしていることに気づきました。グリーンのように見えていたけれど、ほのかにブルーが入っています。


「綺麗な目ね」


そう言うと、彼女は嬉しそうに笑いました。


「さあ、行くわよ」


エグランティアは私の手を取ると、空中にふわりと浮き上がりました。私はつられるようにして、でも、自然と自分で浮かぶことができていました。

背中についた小さな羽は、とても強い力を持っているようです。


私たちは窓を通り抜け、夜空の中を飛んで行きました。


風に乗って。

月に向かって。

魔法の時間は、真夜中を過ぎても終わりません。