法学基礎講義の講義内容を詳細に書いていきます。ブログによる模擬講義のようなものを想定しています。今回は7回目ですね。法学基礎講義のプロモーションになると嬉しいですね。

 

 まず、憲法入門はB⁺~Aです。重要分野の1つです。人権の歴史的変容、外国人の人権を学びます。過去には頻出の分野でしたが、重要性がやや下がっています。特に外国人の地方参政権は最頻出分野であったのですが、議論が低調になったこともあり重要性が下がっています。

 

人権の歴史について学びます。①国民権から人権への変容②自由権から社会への変容③法律による保障から憲法による保障へ④国内法的な保障から国際保障への変容を学びます。④の問題意識は令和6年度の京都大学でも出題されましたね。これも単に退屈な歴史とみるのではなくのではなく、歴史を俯瞰的にみて、現代的な時事問題は歴史的などの文脈に位置づけられるのかを意識すると高い評価を受けることができるでしょう。この意識はどのような時事問題でも役立ちます。

 

 ①の人権思想は、近代市民革命以前から存在したが不十分なものでした。1215年のマグナカルタや1628年の権利請願や1689年の権利章典に人権思想の端緒はありました。

 もっとも、これらの宣言に書かれた権利は、近代市民革命以降に確立した人権とは違い、国民権又は臣民権といったものであった。国民であるから認められる権利といったものである。本来の人権は、人が人であれば当然に認められる権利であるから、当時の権利は不十分なものであった。国民権または臣民権が、本来の人権になるまでは近代市民革命を経る必要があった。

 

 ②自由権から社会権へは自由権中心の社会から社会権が生まれた経緯を学びます。近代市民革命を経て、成立した社会は国民権の時代に比べると人権保障の度合いが高い社会であった。その当時の人権は自由権が主流であった。自由権は経済の活性化には役立ったものの、過度な競争が発生し弱者はより弱者になりました。そこで、人間らしい生活をできるように、国家が何らかのサポートをする必要がでてきた。そのときに、新たな人権として発展生成したのが、社会権です。

社会権とは、基本的人権の一種で社会国家の理念のもとに、個人の維持・発展に必要な諸条件の確保を国家に要求する国民の権利をいいます。社会権の理念ができて以降、生活保護制度や社会保険制度や義務教育制度が整備されました。

なお、社会権を憲法上初めて明記したのが、ドイツのヴァイマール憲法(1919年成立)です。同憲法は、その人権宣言のなかの経済生活の章において、「経済生活の秩序は、すべての者に人間に値する生活を保障することを目的とする正義の原則に適合しなければならない」(151条)と規定し、国家に社会的・経済的弱者の保護を義務付けました。

このように、歴史的に自由権では国民の人権や生活の保護が十分ではなかったため、補完するために社会権という人権が発展・生成した。このように、社会権を保障する国家を福祉国家・積極国家といいます。この人権の発展の歴史を大きな流れとともに、具体例や国や政策とともに理解してください。

近年では、福祉を充実させた結果としてフリーライダーがでてきた結果として、福祉削減を主張する新自由主義の考え方がでてきている。その例として、サッチャリズムやレーガノミクスや小泉改革等が挙げられます。この新自由主義のメリット・デメリットを問う問題が出題されています。これは、新自由主義の破綻が明らかになった近年に出題されがちなテーマすね。
 

 ③法律による保障から憲法による保障へは、人権が法律等の法令によって保障されていたものが、憲法によって保障されることになったことを指します。過去には法律の制定によって容易に人権を制限できるものでした。 

ところが、第二次世界大戦時のナチスの政策により人権が法律で容易に制限できたことの反省から、人権保障の度合いを強化する必要がでてきた。そこで、大戦後に自然権の思想を強調して、人権は人が人であれば当然に認められる権利であるから、法律による保障という従来の発想を超え、法律によって人権を侵害してはならないという発想になりました(法律による保障から憲法による保障)。憲法は一般に法律の改正よりも手続きが厳格なため、慎重な討議をすることができます。そのことにより、最高法規性や立憲性が担保できます。   

このような問題意識は、京都大学で硬性憲法性のメリット・デメリットで聞かれています。

 

 ④国内的保障から国際的保障へは、従来は国内での人権保障で十分と考えられてきたが、他国内での不当な人権侵害が、内政不干渉の名のもとに見過ごされては、人権侵害を救済することはできません。そこで、人権保障の国際的な取組みが試みられています。具体例としては、世界人権宣言や国際人権規約等がある。この問題式が令和6年度の京都大学でも聞かれていますし、平成27年度でも聞かれていると言ってもいいでしょう。

 

 次に外国人の人権について学びます。過去に頻出の問題でした。特に地方参政権がよく出題されていました。まず問題の所在ですが、日本国憲法は、人権について三章に「国民の権利及び義務」と規定しています。そして、この章の中で、11条に「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定しています。

 これに対し、外国人の人権は明文がないため問題となる。戦後すぐには、否定説もありました。理由は、人権の章が「国民の権利及び義務」と規定していることは、外国人の人権を明示に排除する趣旨と考えられるからです。

しかし、現在では、基本的には外国人が、人権享有主体であることに争いはありません。その理由は二つあります。一つ目は、憲法が徹底した国際協調主義(憲法前文、98条2項)を採っていることです。二つ目は、人権の前国家性です。この人権の前国家性とは、人権とは国家が成立する前から普遍的に保障される性質を持っているから、外国人であっても保障されるという考え方です。

 上記の議論を受けて、外国人も人権享有主体性となることについては決着しました。問題は、どのレベルまで人権が認められるかに移ってきました。つまり、外国人といっても、思想良心の自由や学問の自由や信教の自由は認められるでしょう。他方、国会議員に立候補する権利まで認めることはできるのでしょうか。国の安全が外国人に左右されることまで、憲法は許容しているのでしょうか。現在の論争の焦点は、どのような性質の人権が認められかです。

文言説と性質説があるところ、文言説は現在では少数説となっています。現在の判例・通説は性質説である。性質説とは、権利の性質によって外国人に適用されるものと、そうでないものとを区別するという説です。性質説に立つと理解されている判例として、マクリーン事件があります。この事件の判旨や理由等の判決理由の判断を押さえておくといいでしょう。外国人の人権については、性質説を前提として理解すればよいでしょう。そして、具体的な人権について、個別に保障すべきか否かを論じればよいでしょうか。

 個別の人権については、①入国の自由②在留の自由③再入国の自由④出国の自由⑤政治活動の自由⑥一般的な自由権⑦一般的な社会権⑧参政権等を論じればいいでしょう。すべての人権を論じる方もいますが、当然に認められるものは論じなくてもいいでしょう(例:裁判を受ける権利)。外国人の問題で論じるべきは、争いになったことがあったもののみです。その点に配点があると思われる

 

 地方参政権は単独で出題される可能性があります。外国人の人権を論じる問題が出るときには、すべての人権を聞いてくる場合と特定の人権を聞いてくる場合(参政権が多いです)のパターンがあります。そのため、双方で準備しておくことを推奨します。

現在、法的にも政治的にも大きな論争となっています。従来は、参政権はその性質上、外国人には認められないと考えられてきました。憲法の国民主権(憲法15条)に抵触すると考えられてきたからです。この議論は30年までは当然視されていました。

 もっとも最近、外国人にも参政権を認める議論が出はじめている(30年程度前まではほとんどが否定説であった)。また、定住外国人には地方参政権を与えても違法でない旨の最高裁判例もだされました(最大判平成7年2月28日)。

 外国人の参政権については、狭義の参政権(選挙権・被選挙権)と広義の参政権(公務就任権)があるので、混同せずに分けて論じることが大切です。過去に出題されたときは、広義の参政権を書かない人は落とされていました(もちろん、他の答案や科目との総合点なので、これだけが落ちる根拠になったとは思えませんが、不利にはなったでしょう)。

 参政権については、広義の参政権、狭義の参政権の中の国政レベルの選挙権・被選挙権、狭義の参政権の中の地方レベルの選挙権・被選挙権を分けて答案構成するといいでしょう。また、地方の選挙権については、要請説・許容説・禁止説等を紹介して、私見を示すと加点の余地があります。


 7回目のテキストは14000字程度で、解説は2時間半弱です。これに基礎概念を学ぶQ&Aを数十個付けています。復習の便宜に付けました。おそらくですが、定義等には配点がありますので、これで定着するといいでしょう。

さらに、演習問題を10個程度付けています。この演習問題が、本試験レベルの問題の類題になります。この演習問題が書ければ本試験も恐れることはありません。本試験の問題意識を抽出した問題となります。5回目では、1つの解答例も付けて解説しています。これは基礎講座では初めての試みです。解答例を示して、インプット段階からアウトプット意識を養成してほしいという受講生の声を反映しました。

 

上記のような講義構成を通じて、試験合格の力を養成します。