法学基礎講義の講義内容を詳細に書いていきます。ブログによる模擬講義のようなものを想定しています。今回は3回目ですね。予備校生は講義内容の復習に、独学者は予備校的な講義の内容を把握する一助に、同時に法学基礎講義のプロモーションになると嬉しいですね。

 

 まず、民事法と刑事法はAです。重要分野の1つです。同じ事案から発生した法的責任であっても、違う裁判所で審理されることを学びます。また、裁判による紛争解決方法を学びます。さらに、裁判以外の紛争解決手段を学びます。裁判以外の紛争解決手段としては話合い(いわゆる示談)やADRや自力救済等があります。このうち、自力救済の禁止については、出題されることが多いです。この概念については社会契約論の成り立ちとセットで書くと、高評価が得られます。

 

 また、具体的な事例を通じての民事責任、刑事責任、行政責任(処分)を学びます。この分野では、一行問題でも事例問題でも出題される可能性があります。そのため、どちらで出されても書けるように準備すべきです。それぞれの責任の定義、責任の取り方、具体例、立証の程度、証拠とできる範囲等を理解すべきです。最近では司法試験の論文式試験でも、民事訴訟で利用できる証拠の範囲が出題されていましたね。案外、編入試験で学んだ点がみなさんの司法試験で役立つことがあるのかもしれませんね。

 最終的に、民事責任、刑事責任、行政責任(処分)の社会的な役割、共通点、相違点を書けるようにしておくといいでしょう。

 

 次に、民事責任と刑事責任の追及は原則として別の裁判所や手続きで行われるところ、その例外として民事責任を刑事責任で追及する制度を学びます。民事責任と刑事責任を融合させる制度は損害賠償命令制度といいます。この損害賠償命令制度の趣旨、内容、どのようにして導入されたかについて学ぶ必要があります。この制度自体が、犯罪被害者保護法制の拡充の中で生まれたことを意識すると良い記述になるでしょう。犯罪被害者保護法制は、ちょうどその当否が議論されている時代に京都大学で出題されています。その意味で、京都大学は広義の時事問題がよく出題されます。そのため、広義の時事問題に通じることと、従来の制度のとの整合性を意識するといいでしょう。

 

 さらに、ADRについて学びます。ADRとは、Alternative Dispute Resolutionの略称であり、裁判外紛争解決手続きといわれます。ADRの手続きとしては、あっせん・調停・仲裁等があります。裁判手続きでは、時間や経費が掛かるので、紛争解決手段として利用を躊躇する人も少なくありません。そこで、簡便・迅速・安価なADRが注目されています。ADRは、一行問題として出題されることもありますし、事例問題としてさまざまな法解決手段の1つとして出題されることもあります。ADRの紛争解決手段の特徴をおさえておくといいでしょう。

 

 そして、懲罰的損害賠償制度について学びます。この制度は最近よく出題されています。懲罰的損害賠償は、加害者の行為が強く非難される場合に、実際の賠償に加えて支払われる賠償のことで、加害者に対する懲罰と一般予防効果を目的としています。日本ではこの制度は導入されていません。アメリカの懲罰的損害賠償を認めた判決を日本で執行することができるかどうかは、平成9年7月11日の最高裁判決で判示されました。しかし、最高裁は懲罰的損害賠償の強制執行を認めませんでした。日本には懲罰的損害賠償に似た制度として、民事執行法172条の間接強制金、労働基準法114条の付加金制度があります。懲罰的損害賠償制度には賛否両論があり、賛成する立場としては違法行為の防止に効果があるという意見や、企業のコンプライアンス体制が充実するという意見などがあります。一方、反対する立場としては、巨額の懲罰的損害賠償によって企業が倒産しかねないという意見や、濫訴社会を招きかねるという意見などがあります。この制度は、導入の是非について、法制度としての社会的メリット・デメリットと、法理論上の齟齬の観点から出題されることが多いです。

 

 最後に裁判員制度について学びます。裁判員制度は、特に重要な刑事裁判に一般市民が参加する制度で、職業裁判官3名と裁判員6名が裁判を行います。この制度は、国民の司法に対する理解・信頼の増進や裁判の迅速化を期待しています。しかし、量刑の不均衡やマスメディアによる影響など、懸念される点もあります。裁判員は法の適用や事実認定や刑の量刑等について権限を持ちますが、裁判の進行や法の解釈は裁判官固有の権限となります。この制度は2009年に施行され、約60年ぶりに一般市民が裁判に関与することとなりました。裁判員制度により、裁判が身近なものとなり、司法に対する理解・信頼が生まれることが期待されています。また、裁判の迅速化も図られています。しかし、量刑の不均衡やマスメディアによる影響など、懸念される点もあります。裁判員制度は、メディアの不当な影響を受けて判決を下すおそれがあると指摘されています。これらの問題に対する解決策として、量刑に関する判例のデータベースを裁判員に提供するなどの取り組みが行われています。しかし、これらの取り組みが十分であるかどうかは、今後の運用と評価によります。裁判員制度はあらゆる大学で出題されています。最近は、制度を知っているだけでは合格答案が書けず、制度改善のことまで書けないといけない出題が多いですね。

 

 3回目のテキストは12000字程度で、解説は2時間半弱です。これに基礎概念を学ぶQ&Aを数十個付けています。復習の便宜に付けました。おそらくですが、定義等には配点がありますので、これで定着するといいでしょう。

さらに、演習問題を10個程度付けています。この演習問題が、本試験レベルの問題の類題になります。この演習問題が書ければ本試験も恐れることはありません。本試験の問題意識を抽出した問題となります。3回目では、1つの解答例も付けて解説しています。これは基礎講座では初めての試みです。解答例を示して、インプット段階からアウトプット意識を養成してほしいという受講生の声を反映しました。

 

上記のような講義構成を通じて、試験合格の力を養成します。