〝ガイア・ダイジェスト〟。
 〝星の消化〟とも呼ばれるこの現象は、〝ポールシフト〟が原因と言う説もある。突然宇宙に出現した巨大な磁力を持つ流星に地球の磁場が引き寄せられ、その流星が地球に最も近づいた瞬間、地球上に無数の小規模ブラックホールが瞬間的に発生し、亜空間の中に多くの生物が吸い込まれたという説だ。その証拠に、〝ガイア・ダイジェスト〟発生後に地球上の質量が著しく軽くなり、惑星の軌道が太陽に近付いたというデータがある。
 しかし、現在も地軸は〝ガイア・ダイジェスト〟以前の位置と変わらないことから、本当に〝ポールシフト〟が起きたのかは以前謎のままであるという。


 当然ながら、〝ガイア・ダイジェスト〟を神の裁きだと信じる人々もいる。生き残った人々は選ばれた人類であると。しかしながら、それら宗教上の解釈は科学的根拠を軽視する傾向があり、まさにご都合主義といった側面も垣間見えた。実際に消失したのは人類だけではなく、地球上のありとあらゆる生物なのだ。


 現在の生態系は〝ガイア・ダイジェスト〟以前と大きく変わっているという。ヒトの干渉が減少し、生態学的地位に豊富な空きができた環境下で、再度、激しい生存競争が繰り広げられたという。


 〝ガイア・ダイジェスト〟を機に、多くの生物は新しい環境下にいち早く適応し、多くの子孫を残せるよう進化した。ヒトもまた絶滅の危機に晒される状況下だったため、体のつくりが以前と比べて進化したという話だ。


 〝ガイア・ダイジェスト〟に相当する地球の歴史上の奇怪な衝撃はこれまでに――オルドビス紀、デボン紀、ペルム紀、三畳紀、白亜期――五度あったとされている。一番有名なのは恐竜大絶滅だろう。その恐竜大絶滅でも地球上の生命の七割が絶滅したと考えられている。しかし、当時を知る者はおらず、多くの生命が何故消え失せたのかは未だ推測の域を出ないのである。