こんにちは!れいです!
私は数学を専門とはしていますが,科学全般(物化生地)にも興味があります!
henka.のライターの皆さんの科学愛溢れる記事を読んで,「私も物化生地に関連した記事を書きたい!」と触発されました!
ということで,今回は化学で数学してみたいと思います!
1. 正多面体と準正多面体,半正多面体
正多面体(regular polyhedron)とは,以下の3つの条件をすべて満たす多面体のことをいいます.
(1) すべての面が合同な正多角形
(2) どの頂点に集まる面の数も同じ
(3) へこんでいない多面体(凸多面体)である
正多面体は,正四面体,正六面体(立方体),正八面体,正十二面体,正二十面体の5種類のみです.
さて,正多面体は5種類しか存在しないので,「条件(1)~(3)をすべて満たす」というのは「厳しい条件」ですよね.条件(1)~(3)を緩めたら,該当する多面体は増えそうです.
条件(1)を緩めて,「どの面も正多角形である(すべての面が合同でなくてよい)」としてみましょう.
以下の条件(1’), (2-1), (2-2), (3)を満たす多面体を準正多面体(quasi-regular polyhedron)といいます.(※1)
(1’) どの面も正多角形である(すべての面が合同でなくてよい)
(2-1)すべての頂点まわりが合同である
(2-2)すべての辺まわりが合同である
(3) へこんでいない多面体(凸多面体)である
準正多面体は,立方八面体と二十・十二面体の2種類のみです.
さらに条件を緩めてみましょう.
条件(2-2)「すべての辺まわりが合同である」を捨てます.
以下の条件(1’), (2-1), (3)を満たす多面体を半正多面体(semi-regular polyhedron, アルキメデスの立体)といいます.
(1’) どの面も正多角形である(すべての面が合同でなくてよい)
(2-1)すべての頂点まわりが合同である
(3) へこんでいない多面体(凸多面体)である
半正多面体は,13種類あります.(※2)
(※1) この定義での「準正多面体」と「半正多面体」を,まとめて「準正多面体」ということがある.
この記事では,「準正多面体」と「半正多面体」を区別する.
(※2) ミラーの多面体,ねじれ立方体(鏡像),ねじれ十二面体(鏡像)を加えて16種類とすることもある.
さて,半正多面体の一つに,切頂二十面体というものがあります.
正五角形と正六角形の面をもつ,サッカーボール型の多面体なのですが,この立体,化学で見たことはありませんか…?
そう,フラーレン(C60)です!
▲奥がフラーレン(C60)の模型.
ちなみに,手前はドデカへドラン(dodecahedrane, C20H20)の模型です.
名前の由来は十二面体(dodecahedron).
20個の炭素原子が正十二面体をなしており,各炭素原子には水素原子が一つずつ結合しています.
2. フラーレンとは?
フラーレン(fullerene)は炭素の同素体であり,球状の構造をしています.
1970年,大澤映二(当時,北海道大学助教)はフラーレンの存在を予想していました.
その後,1985年にクロトー,スモーリー,カールらにより発見されました.
この功績により,クロトー,スモーリー,カールの3人は1996年にノーベル化学賞を受賞しています.
さて,フラーレンと聞いて,「C60のやつ」と思った方もいるかもしれません.
実は,フラーレンはC60以外もあります!
フラーレン界で有名なC60フラーレンは,バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)とも呼ばれます.
前述したように切頂二十面体(サッカーボール型)をしており,六員環20個,五員環12個から成ります.
炭素原子の数が60個を超えるフラーレンは高次フラーレン(Higher fullerenes)といいます.
例えば,C70, C76,C84 などがあり,C540という巨大なフラーレンも存在します.
C60はサッカーボール型でしたが,C70はラグビーボール型です.
そんな高次フラーレンですが,「フラーレンを構成する五員環の個数は,炭素数に依らず12個」というと驚きませんか?
C540でさえも,五員環の個数はC60と変わらず12個なのです!
その理由を,数学を使って解き明かしてみましょう.
3. フラーレンとオイラーの多面体定理
オイラーの多面体定理を使うと,その理由がわかります.
(※3) 「穴のない」立体とは,「膨らませると球になる」立体のことをいう.
穴のある(例えば,膨らませるとドーナツ型になる)立体では成り立たない.
ところがどっこい,穴のある立体でも成り立つ「拡張版オイラーの多面体定理」も存在する.
気になった方は,ぜひ調べてみてください.
あるフラーレンの六員環の個数をp,五員環の個数をqとします.
このとき,q = 12となることを示します.
フラーレンを多面体と見たときの,頂点の数,辺の数,面の数をそれぞれV, E, Fとします.
①面の数に着目します.
面の数は六員環と五員環の個数の和なので,
が成り立ちます.
②辺の数に着目します.
六員環の個数はp,五員環の個数はqなので,単純に数えると辺の総数は6p + 5qです.
しかし,1本の辺は2つの面に属しているので,実際の辺の総数より2倍多く数えている(=2E)ことになります.よって
が成り立ちます.
③頂点の数に着目します.
六員環の個数はp,五員環の個数はqなので,単純に数えると頂点の総数は6p + 5qです.
しかし,1個の頂点は3つの面に属している(※4)ので,実際の頂点の総数より3倍多く数えている(=3V)ことになります.よって
が成り立ちます.
(※4) 多面体の頂点に属する面は3つ以上ある.(2つ以下だと立体にならない)
今回は正五角形(五員環)と正六角形(六員環)で立体を作るので,頂点に属する面が4つ以上あるとすると,頂点のまわりの角は108°×4 = 432°以上となる.
頂点まわりの角が360°を超えているので,凸多面体にならない.
(1), (2), (3)に対してオイラーの多面体定理を適用することで,
となり,フラーレンの五員環の個数は常に12個であることがわかりました!
今回,化学で数学をしてみましたが,いかがだったでしょうか?
フラーレンの例に限らず,数学は現代の科学を支える「縁の下の力持ち」的存在です.
また,日常生活や自然現象など身近な場面にも,数学は潜んでいますよ!
ではまた!
(余談) 高校時代,フラーレンの模型を,リレーのバトンとして使ったことがあります.
中が空洞で持ちやすいので,おすすめです.
参考文献
・一松信.正多面体を解く.東海大学出版会,2002.
・”半正多面体と準正多面体”.高校数学の美しい物語.
https://manabitimes.jp/math/2871
・”オイラーの多面体定理の意味と証明”. 高校数学の美しい物語.
https://manabitimes.jp/math/613
・”フラーレン”.東京化成工業株式会社.
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/12961
・”File:Fullerene c540.png”.Wikimedia Commons.
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Fullerene_c540.png





