お久しぶりの忍比徒です。
今年も残すところあと10日ほどになってきましたが、みなさん今年のやり残したことちゃんと終わらせることはできましたか?僕は部屋の大掃除をしようと思っているのですが年末が近づくにつれてどんどん予定が埋まっていき本当にいつやるのだろうと毎日思っているところです…(笑)
話は変わりますが、この記事を書いているのはちょうど12月入ってすぐの時期になりますね。実は、この時期なると毎年流行する「インフルエンザ」にかかっていたのです(2年ぶり5度目の発症)。よくある甲子園出場みたいな言い方はさておき、まさか今年かかるとは思ってもいなかったので熱が出たときにはびっくりしました。免疫力に関しては強いほうだと自負しておりますので不思議なこともあるんだなぁ程度で流しおきます。(皆さんもかからないように予防はしておきましょう!!)
今回のインフルエンザですが、少し面白いことがありました。通常発症した時には大体2~3日程度熱が続き、咳や鼻水がさらに数日続くのがセオリーでした。しかし、今年は一日だけ39℃後半の熱が出るだけでその次の日からは、僕は本当にインフルエンザにかかっていたのかと錯覚を起こすくらいの復活をみせピンピンしてました笑
さて、インフルエンザにかかったら、皆さんお医者さんに行った後、薬剤師さんにもらうものありますよね。
そう、「薬」です。今回早く治癒したのは、このお薬のおかげです。そんな、化学を繫栄させてきた立役者といっても過言ではない「薬」について語っていこうと思います。
インフルエンザに効くお薬は、数種類あり、今回はその中でも4つご紹介しようかなと思います。(僕は医者でもありませんし薬剤師でもありませんので簡単な紹介になりますのでご承知おきください。)
(※分子模型の色について)
黒=炭素、白=水素、赤=酸素、青=窒素、黄色=硫黄、緑=フッ素 というように今回はします。
一部二重結合の色が紫になっているところがありますが、数の都合によりそのようになっているので他の物と同様と考えていただいて結構です。(まさか、足りなくなるとは自分でも思ってなかった...)
①タミフル(オセルタミビルリン酸塩、C16H28N2O4・H3PO4)
一つ目はタミフルです。個人的にはこの薬が一番有名なのではないでしょうか?それもそのはず、この薬は世界で初めて認められた抗インフルエンザ薬で、当時はとても需要が高く一時期在庫切れを起こしていたほどでした。2018年に全年齢での使用が可能とされています。
化学名:(-)-Ethyl(3R,4R,5R)-4-acetamide-5-amino-3-(1-ehtylpropoxy)cyclohex-1-ene-1-carboxylate monophosphate
②リレンザ(ザナミビル水和物、C12H20N4O7・XH2O)
二つ目は、リレンザです。この薬も知っている人が多いのではないのでしょうか。インフルエンザになると青と白の吸入器を使って吸入して薬を服用するものです。薬が粉になっているので5歳以上の吸入がうまくできる方に推奨されています。
吸入器
今回僕はこの薬に助けられましたね
化学名:(+)-(4S,5R,6R)-5-acetylamino-4-guanidino-6-[(1R,2R)-1,2,3-trihydroxypropyl]-5,6-dihydro-4H-pyran-2-carboxylic acid hydrate
③イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、C21H36N4O8・H2O)
三つ目はイナビルです。この薬は過去に一回くらい使った記憶があるかなぁって感じです。この薬は一回の吸入でタミフル・リレンザの5日分の効果が期待できるとされています。ただ、少し苦いのが特徴です。
化学名:
(2R,3R,4R)-3-Acetamido-4-guanidino-2-[(1R,2R)-2-hydroxy-1-methoxy-3-(octanoyloxy)propyl]-3,4-dihydro-2H-pyran-6-carboxylic acid monohydrate (前者)
(2R,3R,4R)-3-Acetamido-4-guanidino-2-[(1R,2S)-3-hydroxy-1-methoxy-2-(octanoyloxy)propyl]-3,4-dihydro-2H-pyran-6-carboxylic acid monohydrate (後者)
(長くなってしまうので今回はあまり語りませんが、前者と後者の違いには「絶対立体配置」というものが関係してきます。詳しく知りたい人は「R,S絶対配置」でしらべてみよう!!)
④ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル、C27H23F2N3O7S)
四つ目はゾフルーザです。この薬は日本で開発されたもので、最大の特徴は一回の服用で済むことです。
化学名:({(12aR)-12-[(11S)-7,8-Difluoro-6,11-dihydrodibenzo [b,e]thiepin-11-yl]-6,8-dioxo-3,4,6,8,12,12a hexahydro-1H-[1,4]oxazino[3,4-c]pyrido[2,1-f][1,2,4] triazin-7-yl}oxy)methyl methyl carbonate
ここでそれぞれの化学的な仕組みを少し説明しますね。
今まで4種類の薬を紹介してきましたが、化学的な仕組みは大まかに2種類にわけることができます。
①タミフル、リレンザ、イナビル
一言でいうと、「増えたウイルスが、細胞の外に出られないように閉じ込める薬」です。
インフルエンザウイルスは、私たちの体の細胞に入り込んでコピー(分身)を大量に作ります。ここまでは薬で止められません。
問題は、コピーされた大量のウイルスが「さあ、隣の細胞も攻撃しに行くぞ!」と外へ飛び出すときです。
ウイルスが細胞から脱出するとき、細胞壁と自分をつないでいる鎖を切るために「ノイラミニダーゼ」という酵素(ハサミのようなもの)を使います。
これらの薬の形は、この「ハサミ」の鍵穴にピッタリはまるように作られています。
薬がハサミにカチッとはまって蓋をしてしまうと、ウイルスは鎖を切れなくなります。
ウイルスは細胞の外に出られず、その細胞の中で閉じ込められたまま寿命を迎えます。これが薬の効く仕組み(ノイラミニダーゼ阻害薬)です。
では、実際に化合物のどの部分が関与しているのでしょうか?
【タミフル】
タミフルは、カルボキシ基とアミノ基でウイルスをとらえ、ペンチル基でハサミを開かせ中にはまります。

カルボキシ基:正に帯電しているアルギニンとイオン結合する。
アミノ基:グルタミン酸などの「酸性のアミノ酸」相手と電気的な相性が良く、水素結合やイオン的な相互作用を作る。
ペンチル基:ウイルスのハサミの鍵穴には、実は普段は閉じているけれど、疎水性のものが来るとパカッと開く「隠しポケット(疎水性ポケット)」があり、脂っぽい鎖がはまると、油同士が馴染む力(疎水性相互作用)で抜けなくなる。
【リレンザ】
リレンザは、グアニジノ基がウイルスの鍵穴の中にあるマイナスのパーツ(グルタミン酸など)に対し、タミフルのアミノ基より強力な電気的な結合(イオン結合・水素結合)を作ります。
この「超強力な電気の引き合い」のおかげで、リレンザはタミフルのような「隠しポケット(疎水性ポケット)」を使わなくても、ガッチリと鍵穴に固定されます。

【イナビル】
イナビルは、リレンザと同様にグアニジノ基を持っており電気的な結合をします。
それに加えて、メトキシ基があることによって、結合した後の安定性が上がります。

②ゾフルーザ
タミフルたちを「出口を封鎖する部隊」とするなら、ゾフルーザは「工場の機械を破壊する部隊」です。
タミフルなどとの違いを簡単に言うと、「ウイルスの増殖を止めるタイミング」が異なります。
ゾフルーザはウイルスが細胞に入って、「コピーを作る瞬間」にコピー機自体を壊します。
インフルエンザウイルスは、自分のコピー(mRNA)を作るときに、細胞(宿主)の材料を一部「盗んで」利用するという、とんでもない習性を持っています。これを「キャップ・スナッチング(Cap-snatching:帽子の強奪)」と呼びます。
ウイルスは、人間の細胞にあるmRNAの頭に付いている「キャップ構造(目印)」という部分を、酵素(エンドヌクレアーゼ)を使ってチョキンと切り取って盗みます。
そして、その盗んだキャップを自分のmRNAにくっつけて、コピーを開始します。
そこで、ゾフルーザは、この「チョキンと切るハサミ(エンドヌクレアーゼ)」に結合して動かなくします。
では、実際に化合物のどの部分が関与しているのでしょうか?
【ゾフルーザ】
ゾフルーザは、コピーするのに必要な動力源事態を奪い取ります。
ウイルスのハサミを動かすためには、「2つの金属イオン(マンガンイオン Mn²⁺)」(電池の役割をしている)が必要になります。
分子の中に「カルボキシイオン(COO-)」があります。
(ちなみに、キレートは高校化学で「フェーリング溶液」のところで出てきますよ)

さて、みなさんインフルエンザの薬には詳しくなっていただけたでしょうか。一つの病気だけでも様々な薬があって効果も違ってくるとなかなか面白いですよね!!!
まぁ、そもそもかからないように日々予防していくことが一番大事なので手洗い・うがいなどはしっかりするようにしましょう。
それではまたどこかで
参考サイト
今回使用させていただいた分子模型は株式会社SouHaさんから購入させていただきました!!オンラインでの販売も行っていますので是非そちらも確認してみて下さいね!!
購入サイトはこちら→
厚生労働省 抗インフルエンザウイルス薬の添付文書
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000560980.pdf











