待ち合わせ時間の10分前にはその場所に行っていたし、電車に乗るときは時刻表を見てから家を出た。
時間を見なくなったのは、子供が生まれてから。
見てしまうと、思い通りに事が進まない事に苛立ちを覚えてしまう。
だから電車に乗るときも時刻表は見ない。
子供のペースで時を使う。
その辺りから、私は腕時計を外すようになった。
当たり前の事だけれど、使わない腕時計はいつしか電池が切れて動かなくなっている。
腕時計を外してからどれくらいの時が経ったのだろう。
そんな事を気にしながら、時々電池を入れ換えメンテナンスに出しながらも、やはり私は腕時計を身に付けない。
そんな日々が続いて16年。
此処のところ、無償に腕時計を身に付けたくて、とうとう購ってしまった。

SEIKO。
藍色の文字盤のクラシカルなデザイン。
小学生の時に父が買ってくれたものに一番近いデザインと色。
時が、私のところに戻ってきている。
私の腕に。
やっと、これから時を見方にして前を向けるのかもしれない。