リックは士官の手を振り払い、机に片手をついた。
「・・・北部は負けた。でも、俺たちは負けられない・・・」
そうつぶやくと、リックは壁に貼られた地図を見る。
北部基地の書いてあった場所が黒く塗りつぶされ、地図の半分以上が黒く染まった。
黒―――それは彼らが敵対するNGF(新世界政府軍)の領地となった場所だ。
リヴァイヴが所有する土地は赤く塗られた部分―――地図の4分の1にも満たない。
北部から脱出し、中央へと逃げ込もうとしている生存兵たちは、黒く塗られていない場所を
遠回りしながら通り抜けなければいけない。
無力さがリックの心に重くのしかかる。
「・・・リック隊長、落ち着いてください。まずは、北部から逃げている彼らを迎えに行かなくては・・・」
「・・・そうだな。じゃあ輸送機を―――」
「それは出来ない。」
クリスが静かに、そう言い放った。
「輸送機は中央といえど保持数が多くない。貴重な戦力だ。」
「何が言いたいんです・・・!」
「助かる見込みのない命に、戦力は割けない。」
「ふざけないでください!!」
今度こそ、リックは激昂した。
「彼らは我々の仲間だ、見殺しにするわけにはいかない!」
「いいや、見殺しにするんだ。そうしなければ、後々もっと多くの兵士を見殺しにすることになるぞ。」
クリスは怒りをあらわにするリックに対し、あくまで冷静に、ささやくように問いかけた。
「お前は若い。普段は冷静で優秀な士官だが、こういう事になるとすぐ熱くなる。
我々は反乱軍――少数派であることを理解しているかね?」
「・・・!それでも、見込みがないわけじゃない・・・!輸送機さえあればきっと彼らは助かる!」
「それは去年までの話だ。今年はもう違う。北部と中央をつなぐ連絡通路がNGFに断たれたのはよくわかっているはずだろう。何故ならば―――」
どん、という音が作戦室に響く。
リックが拳を壁の地図に叩きつけた。
「・・・我々の失敗でそうなったからです・・・!よくわかってますよ、そんなの・・・!!」