「シュレーディンガーの猫」と「彼女の旋律」
福島で原発事故があった。そしてその事故は2年半近くたってもまだ収束していない。東京にいると頭の片隅では気にしてはいても、普段の日常を生きるのに追われて、どこかそのことを奥の方にしまいこんでいる気がする。そして同じ福島であっても浜通りと会津地方では微妙な距離感があるのだということを、今回2つの高校生の演じる舞台を見てあらためて気づかされました。
福島県立大沼高等学校演劇部の「シュレーディンガーの猫~Our Last Question~」は、原発事故で浜通りから会津地方の高校に転校した2人の女子校生と転校先の同級生の話。避難者と受入れた街。一見、変わらぬ日常を一緒におくっているはずの彼らだが、目には見えない微妙な距離感を感じている。タイトルのシュレーディンガーの猫とは、物理学者のエルヴィン・シュレディンガーが提唱した量子力学上の思考実験。箱に入れられ、放射線の放出に生死を握られた猫を想定し、その生死を考えるというものだ。密閉された箱の中で放射物質にその命を握られている猫を、自分たちにみたてて皮肉をこめる女の子の姿に、心が痛む。タイトルを見た瞬間、これは見に行かなければと思った。
会津若松ザベリオ学園高等学校演劇部の「彼女の旋律」は、高校の演劇部が被災地に慰問公演に行き、被災した女の子と共演することになるという話。ボランティアの押しつけをメタ視点を使って、観客が演じている彼らと同じ思考をトレースできるという構造になっている。
この2つの作品を見て、同情とかボランティアとか人との距離感を通して、他者と関わればどうしても生まれてしまう偽善やエゴとどうつきあっていくかがきちんと描かれていたと思います。そういう人間関係の摩擦があっても、生きていることの方が上回ることを高校生達に教えられました。原発事故ということがリアリティを与えたのかはわかりませんが、高校生の演劇のレベルが高くて見れて良かったです。この下北沢での経験が、今後の未来に少しでも影響して、新しい演劇人となってまた下北沢のどこかの舞台に戻って再会できたらいいな、なんて思いました。ありがとうございました。
