煉獄-rengoku-
切り立った断崖絶壁の渓谷でようやく、一歩一歩、
奥歯をかみしめるように、歯を食いしばって
谷底から這い上がってきました。
頂の上は見渡す限り、荒涼としたの切り立った荒野で
あまりの恐ろしさ、心細さに
今、這い上がってきたばかりの谷底を恐る恐るのぞき込むと
そこには底なしの闇が広がっていました。
やはり恐ろしくなって思わず後ずさりすると
そこにはまた深い漆黒の闇が大きな口をぽっかりと広げて
待ちかまえており、無言のうちに
(おいで、おいで)と囁きかけるのです。
谷底を見ても、闇。
頂の八景も、闇。
こうやって私はまた谷底へと気を失って、
引き込まれていくのでしょうか・・・
谷底の煉獄の炎に包まれ
それでもその炎の向こうに見える
愛しい男の腕に抱かれに
炎に突き進んでしまうのでしょうか
煉獄
熱くも激しい、愛の炎。命の、炎。
葉桜 先斗町編
葉桜
「おいでやす。」
磨きこまれた引き戸を開けると、店の中から板前たちの
威勢の良い出迎えの挨拶が飛んできた。
「なんや4月になってもまだ肌寒いなぁ。」
風間は暖簾をくぐりながら、挨拶を返すと
そっと奈美子を店に招き入れてやった。
「お待ちしておりました。」
店の奥から主人が頑固そうな顔を笑顔で崩して出迎えた。
主人は奈美子を見て
「ほぉ」
と、つくづく驚いた、という顔を見せてから
いたずらっ子の様な面持ちで風間と奈美子を見比べながら
「ご予約のときに、今日は珍しく”酒のあてやのうて、上手い白米と
おかずになるようなもんを頼む”って仰るから、
どんな風の吹き回しかと思ってましたら。」
そういいながら、自ら茶を入れて二人に出した。
カウンターに並んで座った美奈子は、にこやかに向かえてくれた
主人に頭を下げて挨拶した。
「東城奈美子と申します。」
「花見の主人、加藤でございます。
今日は、板前一同 いつも以上に心をこめて
仕度させてもらいますから、ゆっくりしていっておくれやす。」
風間は気の置けない間柄の主人に、あからさまに
奈美子の美しさ・若さを冷やかされて
内心、面映き気持ちで一杯であった。だが、それ以上に
初めて連れて来たこの老舗の主人と臆することなく
和やかに話をする奈美子の人柄に改めて感じ入った。
奈美子は早速、主人から、今日は鯛の良いのが入っているが、
焼きがいいか煮付けがいいか、と問われ
あれこれ、聞きながら楽しそうに相談している。
そんな二人のやり取りを風間は眺めながら、
”鰻の寝床”と言われる今日の町屋、先斗町の中にある
老舗の割烹の店作りを改めて見回した。
「先生?」
「うん?」
「あれ、ご主人の話し、全然、聞いてはらへんかったんですか?」
奈美子はおかしそうに笑いながら、今日は金目鯛の良いのが
入っているそうなので煮付けにしてもらってもいいか、と聞いた。
「金目鯛か。ええなぁ。煮付けで頼むか。
それから、まずはビールをもらうかな。生でええか?」
「はい。お願いします。」
それを聞いて、主人はうなずいて板前たちに指示を出し、
仕事にかかり始めた。
磨きこまれたカウンターに、素焼きビアマグに入った、
冷えたビールが2つ置かれた。
「ご無沙汰やな。」
「はい、ご無沙汰しておりました。今日は、ありがとうございます。」
そっと、グラスを合わせて、二人はビールを飲んだ。
風間は折からの柄にもない緊張を解くように、一気にビールを飲み干した。
奈美子は半分ほど飲んで、
「おいしい。」と笑った。
泣ける・・・
愛は愛のまま
これは・・・
聞いた話です・・・
余りに、泣けるので・・・
誰かに聞いて欲しくて・・・
書きます。
~「金婚式は天国でやることになるけど、ええな。」~
教授と研修医の愛の物語
「先生、ご無沙汰してます。」
細身のベージュのスーツに真っ白なシャツを着た奈美子が
はにかみながら挨拶した。
真っ白な歯がこぼれて、変わらぬまっすぐな笑顔がはじけた。
1年ぶりに再会した奈美子は研修医時代より一回り痩せて更に美しくなっていた。
待ち合わせの場所に選んだ四条河原町の百貨店のずっと手前、
人ごみの中からもその姿は際立ち目立っていた。
「元気そうやな」
風間はそういうのが、やっとだった。
「先生も、お元気そうで。全然、かわらはらへん。
雑誌や新聞でもご活躍は拝見してましたから、お変わりないのは
存じてましたけど。」
奈美子は雑踏の中から風間を見つけた途端、笑顔で駆け寄ってきた。
若い二人連れの男が、奈美子を見て思わず振り返った。
そしてその隣にいる自分に不振そうな不躾な視線を投げかけて立ち去った。
(ええおっさんが、と思ってるんやろ。)
風間は内心、悪態をつきながらも不思議とくすぐったい様な
不快なはずなのに何だか、心地良い思いに浸った。
「腹、減ってるか?店のほうはいつでも来てくれてええ、て言うとった。」
「久しぶりに、先生とご飯ご一緒できるから、
今日はお昼ご飯も少なめにしてきたんです。
そしたら3時過ぎた頃から、お腹ペコペコで外来しながら
患者さんよりも私のほうが具合悪くなりそうでした。(笑)」
周りの視線など全く気にすることなく、自分との再会を心底喜び
無邪気に並んで嬉しそうに歩く奈美子に心がざわついた。
(こいつがこんなに平常心なのに、俺がこんなに
落ち着かんでどうする…)
内心の動揺など、気取られぬように風間は予約した馴染みの店がある
祇園の方に奈美子と並んで歩き始めた。
「もうすぐ、祇園さんですね。」
「おぉ、そうやな。この辺はまたえらい人込みになる。」
葉桜
皆様、こんばんは。
東京の桜のことはもう、終焉。
桜吹雪と葉桜が絶妙に美しい頃になりました。
今日、行きつけの美容院でたまたま鏡の陰から見事な桜の大木が
一本見えるのに気づきました。
美容師さんに桜の見事さを褒めると
「こんな都会のど真ん中なのに、都の指定にされるほどの
名木だそうですよ。」
と、答えが返ってきました。
表参道ヒルズだ何だと大騒ぎしても昔から変わらず
都会の変遷を見守っている桜が何よりも
お洒落だと感じた瞬間でした。
さて、最近、ふと考えること。
東京に出てきて、数年。
気づけばその年月は、そのまま別れたダーリンとの年月でもありました。
付き合い始めてまもなく上京し、遠距離恋愛になった私たち。
正確には、離れ離れになると分かっていたから付き会わなかった私たち。
もっと、正確には付き合ってはいけないから敢えて東京を就職に選んだ私。
なのに、私たちはつきあったのでした。
寂しがり屋の私がよくぞ、大都会東京で生きているなぁと
つくづく、我ながら感心、半ば呆れる今日この頃。
(私って、たいがい、無理してるんかなぁ・・・)と。
みなさん、どんな思いで故郷を離れ
そして、どんな時に故郷に戻るのでしょう。
愛しい人を忘れるために遠く離れた東京で暮らすことを決めたのに、
結局は愛したまま、離れ離れに生きた日々。
今、その想いを無理やり断ち切って「兄妹ごっこ」をしているけれど、
無理がある、と思う。
はぁ、桜はちと切な過ぎますなぁ。
おっしょさん
師匠~shisho~![]()
ふぅ~。毎日お寒うございます。
皆様、体調など崩されていませんか?
わたしは日常業務にもようやく復帰し、と同時に
容赦のない、日常に引き戻されています。![]()
でも、しみじみ、健康、ってありがたい。
働ける、ってありがたい、です。
”インフルエンザ”という不測の事態(!)に見舞われ、
しかも、通常の風邪とは違い、強制的に
”業務停止=診療停止=出勤停止”の措置にて
自宅謹慎と相成りました。
療養すること、すなわち”ひたすら寝ていること”
が仕事だった数日。
助けていただいた同僚、及び上司の先生方
ありがとうございました。
元気になりました。
これからも一生懸命、働きます。![]()
寝込んでみて、色々、思うことがありました。
普段みなかった、夢の話(=蔵のはなし)は前回、
書きました。
もう一つ、考えたこと。
それは、今は滅多に連絡を取らなく(取れなく)なってしまった
私の”おっしょさん”(和尚さん、じゃないよ。お師匠さんだよ。)のこと。![]()
わたしのおっしょさんは、私の大好きな先輩であり、ダーリンでした。
学生時代に出会い、当時は学生とその指導医師。
(今、自分がこの指導医師の立場に近づきつつあるが、
あの人、よく声掛けれたなー。笑。できひんよ。普通。笑)
いろいろあって、今は連絡取るのもままならなくなってしまいました。
(たら、れば・・・)は百万回、考えたわねー。
でも、やっぱりこれでよかったんだと、今回、熱でうなされながら
なぜか、しみじみと感じました。
私は現に、こうして遠く離れて 仕事をしており、
あなたのご飯を作ってあげたり、あなたの洗濯をしてあげたり、
そういったあなたの身の回りのことをしてあげることは出来ない。
天職。
そう、言える仕事と巡り合い、その仕事を始めるにあたっても
大切なこと、沢山教えてくれたわたしのおっしょさん。
あなたがいたから、わたしはこうしてちっちゃいけど、キラキラ頑張れる。
この仕事があったから、あなたと遠く離れ離れになったんじゃない。
出会うのが初めから、遅すぎたもんね・・・。
あなたの傍にいてあなただけのために生きる。
それも、やっぱりかけがえがないくらい幸せだったと思う。
でも、あなたはそれを色々な意味で望まなかったね。
私はこれから、ひとの為にどれだけ、役に立つことが出来るだろう?
どれだけの笑顔と安堵を引き出せるだろう?
どれだけの不安と苦しみを分かち合えるだろう?
あなたが私に託した”医者”としての使命。
それに応える事が私から変わらぬあなたへの愛。
あー、ちょっと照れるねー。![]()
師匠、不肖の弟子はがんばっておりまするぞ!
喪失感
大雪![]()
医者の不養生。
日本のことわざにはこれまでも何度も唸らされてきましたが、
今回、文字通り、高熱にうなされながら頭に過ぎったのはこのことわざでした。
インフルエンザに罹患してしまいました。
大雪の週末。都内どころか、自宅も一歩も出ず、ひたすら養生。
(年末、年始もこんなに休まなかったなぁ・・・)
と思いながら、ベッドで水を飲んではまどろみ、起きては服薬し・・・
を繰り返していました。
こういう状況で考えることって、結構、自分の今の現実を突き詰めて
いるなぁ、と朦朧とする頭の片隅で変に分析しているわたし・・・。
寝ながらも食事のカロリー計算をする。
自宅にある食材の残りのカロリー計算よりも
朝からほとんど取っていない食事のカロリーを計算しているあたり
(あー、私もプロの端くれになってきたかしら・・・)
などと、考える始末。
そんな中で、夢を見ました。
覚えている限り一番最初に熱を出して辛かったときのこと。
この度のダウンに際しては、実家から食材の詰め合わせを早々に
宅急便で送ってきてくれた母が付き添ってくれている・・・。
(あー。あのお家、もう、ないんだ・・・。)
私は小さい頃、関西のとある田舎県に住んでいました。
(県まるごと田舎だなんて・・・でも、そうだと、思う。)
田舎だったもので、実家には蔵なんぞがあって
そこは、年に数回、母の堪忍袋の緒が切れるくらいの
オイタ(悪さ)をした私のお仕置き部屋でした。
(数年前、「蔵」という文芸作品がドラマ化されていましたね。
あの作品は見れませんでしたね。いやぁ、これもトラウマでしょうか?)
なぜか、熱で朦朧とする私の記憶にはその蔵が出てきて
(わー、もうしません~。許して~。)
と、収監を恐れて逃げ惑う恐怖が再現されるかと思いきや
(オイタをしていないときは)そっと、母屋に寄り添う様に建つ
美しい白土の蔵が佇んでいるのです。
実家の事情で、私たち家族は関西の別の県へと移住しました。
その後、親戚が継いでいたその実家は今年の年賀状で
やはり、新たな事情で処分されたことを知りました。
あの真っ白なきれいな蔵、もう、ないんだろうなぁ。
怒られたときに閉じ込められてたから、勝手に恐怖の館と
化していたけれど、本当は使わなくなった私のベビーベッドとかも
収められていたのだと大きくなって知ったんだっけ。
蔵さん。
私はあなたに閉じ込められるたびに、号泣し、心底、自分の
やんちゃ振りを反省したものです。
(ここに入れられる位には悪さをしちゃいかん・・・)
そうやって、私は少しずつ、成長させてもらった気がします・・・。
あなたに向かい合って、もう一度、立ってみたかった。
「ありがとう」の重み
皆様、ご無沙汰いたしております。
すっかり、師走でございます。
風邪がはやっておりますが、体調は如何でしょうか?
今日は私の本職にからむお話を・・・。
患者さんは80才代の女性です。
私の外来に通うようになられて3回目のことでした。
前医の処方を少しずつ変更して、薬を調整しているところでした。
突然、肝胆道系の酵素が異常上昇しました。
(!!)
処方を変更していた時期でもあり、一番最初に頭によぎったのは
”薬剤性肝障害”でした。
高齢者なので何があったもおかしくない。
患者さんには真実を伝えました。
「お薬を代えてから肝臓周辺が傷んでいるのが分かってきました。
お薬のせいなのか、他のことが原因なのか調べる必要があります。」
患者さんは、素直に腹部超音波の検査と採血、そして
消化器の専門外来の受診を了承してくれました。
(薬剤性か・・・、肝炎か・・・あるいは悪性疾患か・・・)
外来のカルテには消化器の医師より
「ご紹介いただいた患者さんは精査の結果○○○癌でした。
△△大学病院の外科に紹介しましたが、手術適応はなし、とのことでした。
ご本人及びご家族には結果をお話してあります。但し、予後数ヶ月は
家族にのみ告知済みです。高血圧その他は当院での
通院を希望されましたので、引き続き御高診宜しくお願いします。」
思い心を押し込みながら、患者さんを診察室に呼び入れました。
「お加減は如何ですか?」
いつもと変わらぬ問いかけですが、今日ばかりは
言葉の重みが全く違っていました。
「先生、それが調子がいいのよ。ご飯も食べれるし、
目の玉も黄色くないでしょ?(笑)」
そういって、自らあかんべぇをして、黄染していない、
つまり黄疸の出ていない眼けん結膜(白目)を見せてくれるのです。
「体調、お変わりなくてよかったです。」
患者さんの明るさに救われて、思わずこちらにもいつもの笑顔が戻りました。
「先生が早くに見つけてくれたから。
ほんとにありがとう。
本当に、感謝しているんですよ。
娘と ”時間が沢山残った”って喜んでいるんですよ。」
患者さんは完治の道がないこと、命の残り火は既に
カウントダウンに入っていることを十分すぎるくらい理解されていました。
その上で家族と今までと代わりのない生活が出来ることを
感謝している、と。そして、「死」を意識する時間が出来たことで
家族と別れの時間が十分持てることを感謝している、と。
私は、専門科を選ぶとき、色々な事があって
悪性疾患(癌)のない科を選びました。
それでも、誰よりも悪性疾患を見逃したくない、
と思うようになっていました。
見つけたところで、自分で治療できる訳ではなく
それでも悪性疾患を見逃さぬよう、注意を払っているのは
この”時間が沢山残った”のためなのかも、と思いました。
今回は”数ヶ月”しか残らなかったけれど、
もっともっと、心をこめて仕事をしよう、と思いました。
患者さんに育てられています。
祈
happy 秋憂い
ご無沙汰してしまいました。m(__)m
すっかり、秋、でございます。
自転車で受ける風がすっかり、涼しいを通り越して肌寒い頃となってきました。
皆様、季節の変わり目でございます。
体調は、大丈夫でしょうか?
お年寄りを中心に夏の疲れか、風邪がはやり始めております。
十分、お気をつけください。
私は、自転車をこぎながら
考え事をしたり、数字を計算したり(笑)、予定を立てたり
そして、歌を歌ったりしてしまうのですが
口をついて出てくる歌に、その歌がはやった頃を思い出し
ちょっとシンミリしてしまう今日この頃です。
(逢いたいよー)
(お仕事、がんばってるぞー。
たぶん、また少し、成長したぞー。
いつか、また、また、逢うんだぞー。)
あー、この月、今もあの人を照らしてる。
そんなことを考えながら、鼻歌を鼻声で歌いながら自転車をこいで帰るのでした。
皆様、秋だから、ちょっとおセンチ、よいですよね?^0^
Have a nice week end!
happy お月見 ○
こんばんは。皆様、3連休 如何お過ごしでしょうか?
私は久々に、自宅で 本を読んだり、お掃除したり のんびり 休日を過ごしています。
最近、こういう 何でもない時間がとてもともて、贅沢だと 思うようになりました。
20代の頃は 予定のない 休日、って何だか かっこ悪い(苦笑)なっ、と。
でも、今は
「明日、どうしてるの?」
って、聞かれて
「うーん。決めてないなぁ。起きてから考える。(笑)」
と言える週末の方も、自然で良いかもと。
ちなみに、今日は 中秋の名月。
都会の夜空にぽっかり明いた お月様 を見ながら ○
○○
お団子ではなく、急に食べたくなったたこ焼きを食べています。○○○○
後、1日 皆様 素敵な休日を。
happy 聞き間違い
皆様 こんばんは。^0^
9月ももう、半ばだというのに日中の残暑は酷いものがありますね…。^^;
でも、朝晩の渡る風はやはり秋の風情を運んできてくれています。
いやぁ、人間、真面目であればあるほどとんでもない聞き違いを起こしてしまうことがあるものです。
今日は外の病院で診療の日でした。
健康のため、山歩きを趣味にしている患者さんが来院されていました。
診察が終わって、次回の受診日を決めましょう、という段になって
患者さん:「来月はかなざに行くものですから…」
わたし :「金沢で山登りですか?^0^」
患者さん:「いえ、カナダでトレッキングです。^0^」
わたし :「あら、おや。それはどうぞお気をつけて!」
若干、幻聴気味ですが、老後まで続けられる健康な趣味は大切だと
自分の空耳、棚にあげ、秋の空を見上げました。
週も折り返しました。元気でがんばっていきましょう^0^
