- プリンセス・トヨトミ/万城目 学
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ああ、昔は本レビュばっか書いてたのに、
何故、今、漫画ばかりなのか。
…漫画好きだからにきまってんじゃん。
漫画超おもしれー。
でも本も好き。
特に万城目学と森見登美彦と、町田康と村上春樹はいい。三崎亜記もいい。
他にもいっぱいいるけど、とりあえずパッと出たこのあたりは大体読んでる。
そんな万城目さんの小説最新作。
(といっても出てから結構経ってるけど。)
会計検査局の検査、というお堅いところから、
心は少女に生まれてしまった少年と、彼(彼女)を取り巻く環境、
この何の関係もないふたつが結びつき、奇想天外なラストへなだれ込む様は圧巻。
海外SFには”大ぼら吹き”というジャンルがあって、
奇想天外な大ぼらを連ねていく小説があるそうだけど、
万城目さんも、間違いなくその系譜。
あっけらかんとして、突拍子もなくて、それでいて抜群に面白い大ぼらを吹いてくれる。
そしてちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、本当にあるんじゃないかな?と思わせてくれる。
それは京都や大阪と言った地域性にあるのかもしれないけど。
巻を増すごとに、文章も上手くなり、テーマも少しずつ重厚感を増していく。
今回の目玉はどういっても、性同一性障害の大輔。
見た目はふつうのぽっちゃり男の子。
でも、心は女の子だから、強い意志を持ってセーラー服を着る。
その気持ちを応援してくれる茶子という幼馴染、
全力の悪意で向かってくる蜂須賀という先輩。
大輔がいじめられるシーンはあまりに酷くて胸が痛む。
神様のいたずらのせいで間違えられてしまったからだのために、
こんなにも覚悟を持って戦わなければならないなんて。
こんなに重いテーマ性も、ひらりと軽妙に抱え込みながら、
話は素っ頓狂な方向へ。
いわく、大阪国という独立国家があると。
このとんでもない国の成り立ちと、
会計局の松平さんの記憶と、絶妙に絡まり合い、
特にラストのなだれ込みは圧巻。
一見関係のない人々の一日の行動から、大阪国の規模が浮かび上がる。
こっそり、「鹿男」の脇役南場先生や女学院が出てくるのも嬉しいサービス。
そうして見えてきた大阪国の大きさ、力はめまいを覚えるようなもの。
それに立ち向かう松平さんは敵ながら天晴。
これを綺麗に終局させるとラストには驚きが二つ。
いやいや、またも楽しませてもらいました。
大輔の問題も上手く解決したし、スカッとした。
それに父と息子の話、熱かったです。
非常に良かった。
女も忘れずに良かった。
こういう、ぐっと来るのも書けるようになったんだね!まっきー!
万城目さんのこういう、あっけらかんと明るくて、性善説で、楽しいところが大好き。
次の話も楽しみにしてる♪