探偵伯爵と僕 | お役に立ちません。

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本・漫画・映画のレビューブログ。
本は月に10冊ほど、漫画は随時、
映画はWOWOWとTSUTAYAのお気持ち次第(笑)

森 博嗣
探偵伯爵と僕

少年少女向けに、

現代一流作家の書き下ろし作品が刊行される夢のシリーズ。

森博嗣の巻。


主人公新太は公園で黒尽くめの妙な大人と出会う。

探偵伯爵と名乗る彼は、現実の事件とはどんなものかを教えてくれる。


正直、子供向けを意識しすぎたきらいがあります。

逆意識、ってやつ。

こどもはこども扱いされるのを嫌うはず、

一人前の対等な人間として扱われるべきだ!

ええ、それは賛成なんですけれども・・・


ここまで理屈っぽいこどもはおらんだろう。

感情面であまりにクールすぎるので感情移入しにくかったです・・・

こども時代はもっと感情豊かだと思うのですが。

友達が行方不明になって、ここまで冷静なこもどうかと・・・


伯爵の人物設計は、うん、すてきです。

黒尽くめ、前時代的な言葉使い(「~したまえ」)、大金持ちの癖に妙にけち臭いとこ。

キュートです。

特に、主人公と自転車二人乗りするけれど、

坂道でへばって降りちゃうとことか(笑)

トリッキーなところがこどもに好かれるキュートな大人でいいですよね。

だけど、

一般的な大人とは違う、こどもを対等として扱ってくれるっていう点では、

同シリーズのはやみねかおる作僕と未来屋の夏のがいい出来でしたね。

まあ作者の得意分野の違いですから如何せん。


今作はミステリィの大王道、連続殺人事件が扱われるのですが、

その事件自体ではなく、

それに巻き込まれるこどもの視点、がメインとなっております。

それも、リアリズムを非常に重視して。

森さん、こども向けミステリィについて、

こども時代に読む本について、よぅく考えられたのですね。

現実とはどういうものか、

犯罪、社会、おとなってなんなのか。

その点がきっちり描かれていて非常に良いと思います。

特に犯罪、テロについて取り扱ったところはクールですね。


こどもが大活躍する、っていう少年少女向けの基本を抑えつつ、

一番ラストに森節大爆発のどんでん返しが待っている。


さすがは一流作家。

こういう本に触れられるこどもはしあわせです。