- 森 博嗣
- 探偵伯爵と僕
少年少女向けに、
現代一流作家の書き下ろし作品が刊行される夢のシリーズ。
森博嗣の巻。
主人公新太は公園で黒尽くめの妙な大人と出会う。
探偵伯爵と名乗る彼は、現実の事件とはどんなものかを教えてくれる。
正直、子供向けを意識しすぎたきらいがあります。
逆意識、ってやつ。
こどもはこども扱いされるのを嫌うはず、
一人前の対等な人間として扱われるべきだ!
ええ、それは賛成なんですけれども・・・
ここまで理屈っぽいこどもはおらんだろう。
感情面であまりにクールすぎるので感情移入しにくかったです・・・
こども時代はもっと感情豊かだと思うのですが。
友達が行方不明になって、ここまで冷静なこもどうかと・・・
伯爵の人物設計は、うん、すてきです。
黒尽くめ、前時代的な言葉使い(「~したまえ」)、大金持ちの癖に妙にけち臭いとこ。
キュートです。
特に、主人公と自転車二人乗りするけれど、
坂道でへばって降りちゃうとことか(笑)
トリッキーなところがこどもに好かれるキュートな大人でいいですよね。
だけど、
一般的な大人とは違う、こどもを対等として扱ってくれるっていう点では、
同シリーズのはやみねかおる作僕と未来屋の夏のがいい出来でしたね。
まあ作者の得意分野の違いですから如何せん。
今作はミステリィの大王道、連続殺人事件が扱われるのですが、
その事件自体ではなく、
それに巻き込まれるこどもの視点、がメインとなっております。
それも、リアリズムを非常に重視して。
森さん、こども向けミステリィについて、
こども時代に読む本について、よぅく考えられたのですね。
現実とはどういうものか、
犯罪、社会、おとなってなんなのか。
その点がきっちり描かれていて非常に良いと思います。
特に犯罪、テロについて取り扱ったところはクールですね。
こどもが大活躍する、っていう少年少女向けの基本を抑えつつ、
一番ラストに森節大爆発のどんでん返しが待っている。
さすがは一流作家。
こういう本に触れられるこどもはしあわせです。