http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20110628ddlk07070254000c.html
きびたきのおしゃべり:普通の生活奪い憤り=渡辺諒記者 /福島
放射能という見えない“恐怖”からわが子を守ろうとする母親らを取材して回った。彼女たちの苦悩の一端を垣間見て、家族の形態をも変えてしまう原発事故の恐ろしさを身に染みて感じた。
「仕事のことを考えると、子どもだけ避難させるしかない」。福島市の佐藤美香さん(37)は4歳と7歳の男の子を里子に出すことまで考えていた。 つらくても、一刻も早く息子を放射能の脅威から守りたいという思いが勝っていた。しかし、「お母さんと離れるなんて嫌だ」と次男が大反対し、母子3人は仙 台市への移住を決めた。
佐藤さんは、急に手足に力が入らなくなる難病のギラン・バレー症候群を抱える。それでも、最愛のわが子の気持ちを思えば、片道1時間半かけて福島市に通勤するのは苦にならないという。
福島第1原発から60キロ離れた福島市などで、家族全員で県外に移住したり、父親だけ残って母子が県外に出る「二重生活」を選択するなど事情に よってさまざまだ。古里を離れ、家族が離散する。当たり前の生活が奪われる現実を見聞きし、いたたまれなかった。そんな中、郡山市内で出会った女性 (33)の言葉は衝撃的だった。女性は長らく不妊治療をしてきた。「子どもが欲しくてたまらなかったのに、今はいなくてよかったと思えてしまう原発事故っ て何なんでしょうね」。女性は目を真っ赤にして言い放った。
原発事故で多くの県民が変化を強いられている。女性が「妊娠していなくてよかった」との思いに至る現実に強い憤りを覚えた。放射能を気にせず子育てできる環境を待ちわびる女性たちの気持ちを忘れまい。(長野支局)