「避難」したあの日から
まもなく一年が経とうとしている。

場所を変えたって
その都度恐怖に襲われ
いまだ心が休まる場所はない。

そんな自分はまるでヤドカリみたいだと思う。

しばらく居心地の良かった今の貝でも
やっぱり恐怖は訪れた。

数日前に届いた封書。

宛名は、
私ではない。

字面を見るだけで息が上がることも、
足が震えて崩れ落ちてしまうことも。

いつまでこの恐怖に縛られ続けるのだろうかと
先のことを考えてしまうと

もう一層のこと楽になりたいとまで
一瞬でも本気で思ってしまうことが
なによりの証拠だと痛感させられる日々。

わたしはいわゆる「DV被害者」らしい。

他人事のようにしか表現できないことが
いまだ「洗脳」から抜け切れていないと
専門家は言う。

別の貝へ移り変わることに頭の中は支配され
封書が届いたあの日以降は
暇さえあれば安全な場所を探してしまう。

しかし

そんなことにまで疲れ果ててしまった。

どうせ殺されてしまうのならば
逃げて隠れるのではなく

むしろ散々表舞台に立っていた方が
本当に何かあったとき
少なからず誰かは助けてくれるんじゃないかと。

太陽の光に当たることが大事なのって、
実はそういうところにも理由があるんじゃないかな。

ある意味「覚悟」を決めた私は、
封書の送付先へ直接電話をかけることにした。

まだ夫婦だった頃、
大変お世話になっていたこともあり
ご挨拶やご報告もままならないままの現状にも
止め処ない反省の念があった。

お詫びと感謝の気持ちも伝えたくて、
思いきって電話をしてみました。

無事に通話が終わった瞬間、
ひざから崩れ落ちてしまった。

足の先から震えが止まらなくなり
みるみる全身へと痙攣は連鎖する。

あたたかすぎる対応だったからこそ増す恐怖。
決して悪者だと突きつけたい訳ではない。

だからこそ、たまらなく、怖い。

「今度こそ何をされてしまうだろう」

電気が点いている部屋が怖くて
照明のスイッチは全部オフにし
カーテンも閉め切った。

玄関の鍵が閉まっていることは
数え切れないほど確認をした。

布団にこもる。
まだまだ震えが止まらない。

いつ刃物を持って現れるだろう。

怖い。

どうせ殺されて終わるくらいなら
せめて自分の意思で終わってしまいたい。

解放されたい。

言ってしまった。
私さえ黙っておけばいいのに。

「助けて」って、言ってしまった。

全部自分が撒いた種なのに、痴がましい。

本当にごめんなさい。