2012年6月頃のサカナの汚染状況 (7/4)
主として水産庁が発表している太平洋岸のサカナの2012年6月頃の汚染状態を整理しました。まず福島沖です。(ダブルクリックかシングルクリックすれば、若干見やすくなります)
まだかなりの汚染が見られます。海洋が汚染されたとき、それが長期間にどのような影響をあたえるかは今回の福島原発事故が人類にとって最初なので、どうなるかわからないのが現状です。
食べられるレベルは1キログラムあたり40ベクレル以下です。現在の食品の基準値は政治的な思惑があって、かなり高く設定されていますが、関東、東北の方は外部線量でもかなりの被曝をしており、それにこのような食材からの被曝を「足し算」するので注意が必要です。
また、お子さんでグラウンドでスポーツをする場合は、土ほこりなどからの被曝を受けますから、少し安全側で考えなければならないと思います。
注意が必要なのは「福島沖のサカナの汚染を平均するということではない」ことです。たとえばここに示したサカナを全部食べる場合は平均でも良いのですが、普通の人は好き嫌いがあり、6月20日付近にシロメバルを食べた人は1500ベクレル程度の高い汚染魚を食べることになります。従って、あくまでも個人の健康という点で食材を提供する人も考えてください
またNHKが「福島沖で汚染されていないサカナが見つかった」と放送したので、福島県沖のサカナは汚染されていないと錯覚した人もいますが、正しくは「福島沖でも汚染されていないサカナもあった」ということで、まだ希な例のようです。
毒物汚染がある場合や、流行病がはやったときには「安全な場所がある」という情報より、「あそこに毒物があるとか、細菌が見つかった」ということを先に伝える必要があります。今回の原発事故の場合は東電からお金をもらったとか、力の強いものに逆らいたくないなどの事情で、報道なども「安全なところを報道する」ということが続いています。もし毒物や細菌でそんな報道姿勢ではとても困ります。
つまり、台風が来ても「台風の進路」を報道するのではなく、「台風は沖縄を通過中で、北海道は快晴です。」という報道は無意味だということです。
いっぽう、千葉沖、茨城沖、宮城沖、青森沖(太平洋)の表を示します。ほぼ6月に水揚げされたサカナを表に示しました。
全体的に見ると、福島沖に比較して低く、数10ベクレルのレベルもサカナが多いのですが、なかにはスズキの83ベクレル、マダラの60ベクレルなどが見られますので、かなりの注意が必要でしょう。
茨城沖は福島に近いので1キログラム50ベクレル近くの汚染は仕方が無いのですが、青森沖が50から60ベクレルと高いのは驚きます。海流が北の方に流れたのは間違いないのですが、もしかすると生物濃縮(昨年、汚染されたサカナを今年は大きなサカナが食べて放射性物質が移動した)とも考えられます。
また北海道沖のサカナは数ベクレルに下がってきたようですが、先に示したように海洋の汚染は今回が初めての経験なので、海流や滞留、そして生物濃縮などがどのぐらい進むかは今後の問題です。
海とともに生きていた日本人、広島長崎で原爆の被災を受けた日本人、これまで世界に向かって「被曝は危険だ」と訴え続けてきた日本人、その日本人が始めて太平洋という公海を放射性物質で汚染し、国際基準では危険なサカナを水揚げしているというは実に恥ずかしいことです。
礼儀正しく、誠実で、法律などの社会的規律を守ろうとする日本人の伝統を思い起こして欲しいと思います。東電の社員の多くは立派な人なのに、なぜこんなに集団になると強面で、苦しんでいる人を助けようとしないのでしょうか?
ところで、川魚などの淡水のものは汚染が高いのですが、これは川の中にイオンがすくないので、取り込んだイオン(放射性物質を含む)を排出しないためと考えられています。
いずれにしても、当面、太平洋側(千葉沖から青森沖)までは食べない方が良いでしょう。また慎重な人は北海道沖、神奈川沖も避けることです。
本来は汚染されたサカナを市場に出すことは許されません。水俣病の場合は水銀でしたが、「穫れたのだから売る」というのではなく、「健康のために食べる」という基本を水産業の方は守ってください。
また政府は原子力の通常予算4500億円を取り崩して苦しんでいる農業、漁業の人を助けて欲しいと思います。
(平成24年7月4日)
--------ここから音声内容--------
えー、久しぶりになりますが、サカナの汚染についての情報を整理いたしましたので示します。まず第一に福島沖なんですけども、福島沖はですね、非常に汚れておりまして、この表に示しましたように、シロメバルに1500~1700ベクレルという、非常に、事故当時に近い汚れを示しているものもあります。
一般的には100ベクレルから500ベクレル程度ということで、食べられる限界がだいたい1キログラムあたり40ベクレルですから、それの10倍から15倍ぐらいのものが多いというふうに思っていただければいいと思います。種類はここにずらっと書いてありますが、カレイのような下の方(海底)にいるサカナが昔から汚れるというふうに言われておりますが、やや(種類が)広いかなという感じもいたします。このものを見てですね、ざっと認識していただければと思います。
この魚類っていうのはですね、こういった食べ物は平均することができないんですよ。っていうのはあの、何かが好きっていう人がいるんですよね。例えば、カレイとアイナメが好きだとか、タイばかり食べている人っていますんで、人によって全然違うんですね。ですから、「福島県の平均が」っていうことがちょっと言えないのがツライところでありますが、だいたいこの表をですね、ずらっと見ていただければ分かると思います。
それから、NHKがですね、「福島沖で汚染されていないサカナが見つかった」というふうに放送したこともあってですね、その放送を聞いた人が「福島県沖のサカナは汚染されていない」とこういうふうにですね、錯覚している人もいるわけですね。勿論あの、そういうふうに宣伝する人が多いんで、まぁ漁業関係者にはいないと思いますが、まぁそういう人(錯覚する人)もいるんで…そう思うのはやむを得ないかもしれませんが、これは正しくはですね、「福島沖でも数あるサカナの中ではですね、汚染されてないようなサカナも見つかった」ということであって、まだ希なわけですね。
ですから、ちょっとこれは報道のほんのちょっとしたことですね。「福島沖のサカナを測定したらセシウムが含まれていないサカナがあった」という、そういう報道をですね、それを聞いて「あっ、そうか、福島のサカナはもう汚染がなくなったのか」と早とちりをした人がいるんですが、そうじゃなくて、「汚染されていないサカナもあった」ということですね。
まぁあのー、1年経ってこんなに汚れてるのかというふうに思った人もいると思いますが、実は海洋汚染っていうのがどうなるか分からないんですよ。それから、生物濃縮っていうのはどういうふうになるか分かんないですね。基本的には少しずつ増えてく可能性があるんですよ。っていうのはですね、いったん海の中に溶けたり沈殿したりしたものが、サカナの体の中に入りますね。入った時には、サカナの種類が少なかったりするんですが、例えばコウナゴに入りますね、そうするとコウナゴってのは必ず大きなサカナに食べられます。そうすると放射性物質ってのはタチの悪いことに無くなりませんからね。そうすると、まぁこれを「生物濃縮」と言うんですが、大きなサカナに移る。で、大きなサカナが今度死んだり、陸揚げされたりして、またそこから放射線が出ると…放射性物質が出るというふうにですね、繰り返されるんですね。
もしかして一番悪いケースは、サカナがですね、海の放射性物質をどんどんどんどん体の中に溜め込んで陸にあがる、それをその漁獲すると陸にあがるっていう、そういうなんか放射性物質の回収系みたいになって働くとですね、長期間続くわけですね。これが今後どういうことか?ということが注目です。
それからあの、福島県はこの程度なんですが、その他ですね、千葉とか茨城、それから岩手、宮城、青森というところを拾いますとですね、この次の表にありますように、やっぱりさすが房総ぐらいのところまでいきますと、一桁代のやつも結構でてきます。しかし、茨城、岩手、宮城、青森ぐらいはやっぱりまだ二桁ですね。20~50(ベクレル)ぐらいということですね。ですからまぁ、1キロ40ベクレルがぎりぎりの線ですので、「まぁ食べられてもいいかな」と、「(でも)ちょっと厳しいかな」とそんな感じですね。ええと、これもですね、今後どうなるかちょっと分かりません。
北海道沖が相当低くなりましたが、海流がどう動くか、さっき言ったようにですね、サカナに入ったものがいったい太平洋でどうなるのか?日本としては本当に恥ずかしいことですね、太平洋っていうのは公海で、日本のものだけではないので。そこでですね、汚れたサカナを日本が提供しちゃったっていうことは非常に悲しいことですが、仕方ありません。今後もですね、息長く見ていく必要があるということですね。
それからですね、最後に川魚ですけども、川魚関係はですね、淡水は結構(汚染が)高いんですよ。相変わらずまぁ、何百というのは…何千というのはまだ見つかってはおりません…まぁ例が少ないんですけどね。ウナギとかアユとかドジョウといったですね、こういったものは、川の中にイオンが少ないので、どうしてもセシウムとか取り込んでしまいます。そういうこともあってですね、まだちょっと危ないかなっていう感じがしますね。
それから、ストロンチウムですけども、ストロンチウムの測定値、水産庁で一部出しております。それで、「検出されない」っていう例が多いんですが、ストロンチウムがもしもですね、サカナから検出されてないとしたら、もしかしたら肉だけ検出してるってことはないと思うんですけど、「骨だけ」やらなきゃいけないんですけどね、全部じゃなくて骨だけ。
それからもう一つは、原子炉の中でセシウムとストロンチウムが同じように6%ずつ出るわけですね。それで、農林水産省の方は「陸にはストロンチウムが無い」って言うんですよ。それで、水産庁は「海に無い」って言うんですよ。じゃあどこにいったんだ?と。
で、もし原子炉の中にストロンチウムだけあるっていうのもまた考えにくいんですよ。っていうのはですね、原子炉から出るときに、セシウムとストロンチウムを分けるということはですね、あまり出来ないんですよ。まぁあのー、上に上がる…爆発したときに上に上がってっていっても、爆発ですからねぇ、軽いものと重たいものと一緒に上がっちゃいますからね。
そよそよと漏れたときはまぁ、セシウムしか地上には漏れないかもしれません。ただ、重たい…ストロンチウム…重たいっていうか粒になってるので、海の方には流れるはずなんですよね。だからもしかしたら海藻とか貝なんかに集中的にストロンチウムがあるのかもしれないんですよ。で、それはあのー、つまり、「無いんじゃないか」と、無いことを期待して測定しちゃいけないんです、こういう時って。
まぁ例えばインフルエンザが流行るとか、赤痢が流行るという時は、菌を追っていかなきゃなんないんですね。細菌のいない所を探そうと思ったらいくらでもあるんですよ。で、こういった場合はですね、細菌のあるところ…例えば、水俣病ですと、水銀のあるところを探さんといかんですよね。それが今逆になっておりまして、できるだけ「放射性物質が無い、無い」という印象を与えるために、無い所をわざと測ってるってなケースもあるんですよね。
それをもっと誠意を持って、例えば水銀を追い詰めた時のようにですね…それで水俣はもう今、大丈夫になったんですから。それは、なんで水俣は今は全然水銀大丈夫ですけど、なんでか?って言ったら、水銀のあるところを突き止めて、それを処理するというですね。そうじゃないと今みたいにですね、無い所を一生懸命測って「ストロンチウムがどこあるかあんまり興味ない」と。なにしろ「無いと言えば売れるから」っていうんではですね、やっぱりこの問題は解決しません。
ま、その点で関係者の努力を期待しますし、また政府はですね、原子力の通常予算4500億もあるわけですから、それをぜひ取り崩して苦しんでいる農業、漁業の人を助けて欲しいと、私はそういうふうに思います。
(文字起こし by haru)