時事寸評:日本の自然災害4000億ドル(32兆円)で世界第二位 | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

時事寸評:日本の自然災害4000億ドル(32兆円)で世界第二位 (6/27)




今日も鹿児島の豪雨災害をニュースが報じていました。なぜ、このように毎年、自然災害が続くのでしょうか?それを少し考えてみました。



2012年6月22日国連国際防災機構が各国の自然災害の大きさを発表しました。第一がアメリカで5600億ドル、二位日本4000億ドル、三位中国3300億ドルで、その他の国は一桁以上小さく第四位はタイで450億ドルです。



これを一人あたりで示すと、日本が3200ドルでダントツ、二位がアメリカの1800ドルとなります。中国は人口が多いので、一人あたりにすると一桁低く約200ドル、タイは人口が6600万人なので一人あたりにすると680ドルで、タイの方がむしろ中国より損害が大きいことがわかります.



災害の大きさは、1)災害自体の大きさ、2)その国の発展度合い、があります。一般的に災害の規模が小さくなっても、都市などが近代化されていないと「お金で換算した被害総額」は都市が発展しているほど大きくなる傾向があります。



このトリックを使ったのがゴア元副大統領で、「温暖化でハリケーンの被害が拡大した」と言ったのですが、実は20世紀のハリケーンは後半の方が小さかったのですが、ニューオーリンズなどの都市化が進み、ハリケーンの対策をサボっていたので被害が増えてきたということを逆手に取ったのです。



・・・・・・・・・



ところで、なぜ、日本は世界でも一人あたりの災害が飛び抜けて大きいのでしょうか? すぐ「日本は自然災害が多いからしょうが無いよ」と言われますが、「日本は科学技術立国だから、自然災害ぐらいは克服できるはずだ」という方がずっと前向き思考ですから、「自然災害の原因を探って被害を小さくする」ことを考えてみます.



日本の自然災害の原因は2つあります.
1)先進国で地震があり、大型台風(ハリケーン)があり、土砂崩れが多いのは日本だけ、

2)官庁が縦割りで総合的に自然災害から国民を守ろうという政治が行われていない。



まず地理的なことでは、次の図(赤い筋が震度6以上の地震が起こる地域)で示したように、世界の大型地震は西太平洋に集中しているなどがあります.この地図でわかるように日本は地表のひずみ(マグマの上で動く地殻のひずみ)を一手に引きうけているような地理的関係にあります。これは今回の原発の事故にも関係があったのです。



また大型台風やハリケーンが発生するのは、日本やアメリカに集中していますし、日本は砂でできているので豪雨などで土砂崩れが多発します.でも、近代日本が誕生してからすでに150年も経っているのですから、地理的不利を克服したいものです.



たとえば土砂崩れを取り上げてみましょう.日本では土砂崩れの災害があって、たとえば道路が崩れると土建屋さんが出動して道路を「旧に復する」という事をします。「旧に復する」というと良いことのように思いますが、「崩れる地形のところをそのまま元に戻す」のですから、また土砂崩れが起こるのです.



本当は、一度崩れたらその部分を削って二度と崩れないように平らにすることが合理的です.日本の地形は造山活動が起きたときに偶然に決まったものですから、今の状態が「最適」であるということはありません。平野が多いのは良いことですし、余りに急峻なところで人が住みやすい場所は徐々に削って平らにしていく方が良いでしょう。



でも、そうすると「土建屋が儲からない」という問題があります。私は若い頃、ある地方の県で仕事をしていたのですが、どうも土建屋さん、とくに土木会社の景気がよいのです。そこで調べてみたら、大雨や台風で土砂崩れが起こったら「旧に復する」ということで、「土砂崩れの起こった前の状態」にします。



もともと、「前の状態」で土砂崩れしたのですから、旧に復するというのは「また災害に遭う」ということでもあります。このような事すら合理的な議論ができないのが、今の日本の「知性の劣化」を示すものでしょう。



日本には山が多すぎます。「日本の自然はどのようにあるべきか」という研究を進め、危険な箇所を削って平野を広げるなどの「環境の改善」につとめるべきでしょう。現在の日本は「減税で首相になり、増税に命をかける」ということを認める社会ですから、国土についても「知性の劣化」はかなり進んでいます。


(平成24年6月27日)




--------ここから音声内容--------




えーとですね、今日もニュースが鹿児島の豪雨の災害について報じておりました。えーとまぁ最近のニュースとかニュース解説はですね、表面的なことだけを報道します。「知性の劣化」と私最近言ってるわけですが、そういうことが起こる。これをちょっと考えてみたいと思いますが。





今年の6月22日にですね、国連の(国際)防災機構がですね、各国の自然災害の大きさを発表しました。まぁ形としてはアメリカが一位で5600億ドル、日本が二位で4000億ドル、三位が中国の3300億ドル、それからずっと離れて第四位は一桁違うんですが、タイの450億ドルですね。





ところが、これを一人あたり…国民一人あたりで示しますと、つまり、国土が広いところはどうせ総額が大きいのは当たり前ですから、一人あたりで示しますと、日本が3200ドルでもうダントツ、二位がアメリカの1800ドルで約半分。中国ときたらですね、日本の1/15の200ドル、むしろタイの方がですね、人口が6600万人なので一人あたりは680ドルとやや高いですね。





日本がだから世界一ですよ、災害世界一。なんで日本が災害世界一なのか?というとですね、まず災害自体が大きいこと。その国が発展している方がですね、損害額が大きいですから、それがありますね。だからこの災害っていうのは通常お金で換算しますから、近代化した方が大きくなる、ということですね。





この関係のトリックを使ったのが「温暖化」のゴア元副大統領ですね。「温暖化でハリケーンの被害が拡大した」と、こう言ってるわけですね。それをドルで示しました。ハリケーン自体、つまり自然の大きさ、例えば「最高風速」とか、それから「気圧」だとか、まぁそういったもののハリケーンはですね、これは20世紀の前半の方が大きいんですよね、ええ。





有名になった『カトリーヌ』というハリケーンはですね、確かにニューオーリンズに大きな損害を与えましたが、史上という意味じゃあ6番目で、大きなハリケーンは全部20世紀の前半にきております。まぁ都市化が進んでですね、ハリケーンに対する対策をサボったので、お金としての被害が大きかったということを、気象問題としてゴアが取り上げたと、まぁこういうことですね。





で、まぁこういうふうに、一つ深く考えてみますと、なぜ日本は世界でも一人あたりの災害が飛び抜けて大きいか?ということですね。これはみなさんが考えてるのは「自然災害だからしょうがないね」とかね、いうふうに言うわけですけど、なぜ防げないのかな?ということを一回考えてみたいと思います。





日本は地震国であって、大型台風もくる、土砂崩れも多いというのは確かに世界で日本だけです。しかし、もう一つ問題があるんですね。官庁が縦割りで総合的な自然災害で国民を守ろうと思う政治が行われていません。ま、最初にちょっとこの日本の立地というものを見ますと、原発との関係で示している図ですけども、赤い筋が震度6以上の地震が起こるところで、これはあの、西太平洋に集中しているんですね。





残念ながら日本は、非常に大きな災害国であるということが分かります。これはですね、大西洋が少し若い海でですね、地表のひずみですね…マグマのドロドロしたマグマの上に地殻が乗ってるわけですが、その地殻のひずみを一手に引きうけているという地理的関係にあるからであります。





それから大型ハリケーンがくるのもですね、日本とアメリカくらいなんで、日本は散々ということですね。それからもう一つは日本っていうのは、古い岩石ではなくて、砂でできていますから、豪雨などで土砂崩れが多いということですね。だからこれは自然災害だと思う人が多いですが、実はそうじゃないんですよ、ええ。たとえば土砂崩れを取り上げてみますと…地震の問題はまた別の機会に取り上げますが、地震も人災です。土砂崩れも人災の可能性が高いんですね。





これはですね、雨が降って道路が崩れますとね、土建屋さんが出動して道路をね、「旧に復する」んですよ。これ日本では「旧に復する」ことになってるんですね。これ何を言ってるか?っていうと「崩れる地形をそのまま元に戻す」わけですから、「また土砂崩れが起こる」わけです。 まぁ一回崩れたらですね、そこのところをよく考えて、言えば土砂崩れしたところは無理があるんですから、そういう部分を削って二度と崩れないように平らにしなきゃいけないんですね。





っていうのは、例えば中国地方が何で平らか?というと、だんだんだんだん昔は鋭い山があったんだけど、それがだんだん崩れてなだらかな山になるわけですね。だから造山活動で一旦急峻な山ができても、それは今度、大雨で崩れていくんですね。ですから崩していかなきゃいけないんですよ。民家なんかありますと、なかなか崩せないんですけども、やっぱり今の時代はですね、やっぱり人間の手で崩していかなきゃいけないわけですね。





ところがね、これに大きな障害があります。そうすると「土建屋が儲からない」んですよ。私はね、ある若い頃、良い経験をしたわけですが、どうもね、土建屋さん、特に土木の会社の景気が常に良いんですね。調べましたらですね、台風や大雨で土砂崩れが起こったら「旧に復する」んで、「元の土砂崩れしやすい構造に戻す」んですよ。そうすると、「前の状態」で土砂崩れしたわけですから、旧に復すると「また土砂崩れする」んですよ。





で、これがね、なんでこれがこうなるか?って言ったら、土建屋さんが儲かるからこの方式でやるんですね。つまり、国土交通省の役人と土建屋がくっついてるっていうだけなんですよ。それで死者が出ると、ニュースはもうそのことだけ放送するわけです。下手したら「温暖化による異常気象」とか言ってですね、更に税金を取ろうとするわけですね。





もともと日本は山が多すぎて、日本の自然をどうするべきか?という点ではですね、もう少し、先程言いましたように、徐々に急峻な場所を削ってですね、平野を広げるってなことをしなきゃいけないんです。つまりですね、「環境を守る」っていうことは「今の状態をそのままにする」っていうことじゃないんですね。自然はですね、少しずつ少しずつ変えていけます。急峻な山を削って川に流していき、ま、今の関東平野、それから名古屋の濃尾平野、それから大阪の平野もそうですね、みんな川の沖積平野(ちゅうせきへいや…河川による堆積作用によって形成される平野)ですから。





っていうことはどういうことかっていうと、「山野を削って平野をつくった」ってことなんですね。だから今、人里があったり、それからこのブログで取り上げたみたいに旧に復したりするわけですね。っていうことはどういうことかって言ったら、自然に逆らってるんですよ、ええ。「山を崩す」と言いますとね、みなさんね、「山を崩して海を埋め立てる?なんてことをするんだ」なんて言ってますけども、みなさんが今住んでる平野はですね、全部山を削って平野にしたんです。埋め立てたわけですね。





だから、それはですね、「どのくらいの速度でやるか?」とか「どういうところをやるか?」というのは問題ありますよ。だけども基本的にはですね、「土砂崩れが起こるようなところは削って少しずつ平らにして、そしてその分だけ海を陸地にする」というのが自然の活動なんです。「自然と共存する」っていうのはそういうことですね。





で、住宅を建てちゃったんで、自然と共生できない。本当は土砂崩れが起こる前にやった方が良い。しかし、せめて土砂崩れが起きたんだったらば、そこのところは旧に復しちゃいけないんですね。えー、地震、台風、それから土砂崩れ。これはですね、ほぼ人災であります。


(文字起こし by haru)