原発短信  核燃料棒からの放射線 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

原発短信  核燃料棒からの放射線 (5/30)




「使用済み核燃料の放射線は、使用前の核燃料の放射線の約1億倍だから、とても危険」という表現が使われています。ここで「1億倍」の前に「約」がついているのは、使用中のものは核爆発をして、次から次へと「放射性物質」ができるので、出来たばかりの放射性物質が分解して強い放射線をだします。



でも、1秒以内とか1分以内に分解してしまうものが多いので、4日も経てば1000分の1になります。だから、核爆発を止めた瞬間と比較するか、止めてから少し時間が経ったときと比較するかで何10倍、何100倍と違ってくるので資料によって少し差がでます。ここでは一応、多くの人が1億倍としているので、それを参考にしました。



まず、使用前の核燃料はどんなものでしょうか? 普通はウランの同位体の235が4%ぐらいのものが使われます。それを原子炉に入れる時に作業員が点検しますので、その時の写真を下に示しました。


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ビックリされる人もおられると思いますが、燃料棒から30センチぐらいの距離で放射線に対して無防備な作業員がゆっくり検査しています。ウランは核爆発したあとは別の元素になって大変な放射線をだすのですが、ウラン自体は手袋をすれば手で持てるものです。



そこで、この写真の状態を基準にして、「使用済み核燃料からどのぐらい離れると大丈夫か」を計算してみたいと思います。核燃料棒からは放射線が出ていますから、「距離の2乗に反比例」します。写真の作業員の10倍の距離(つまり30センチの10倍で3メートル)だけ放れると100分の1に、10000倍(3キロメートル)離れると1億分の1になります。



つまり、使用済み核燃料から3キロメートル離れたところでは、この写真と同じように行動できるということがわかります。だからどうということはありませんが、使用前の核燃料と使用後の核燃料のおおよその危険性がわかります。


(平成24年5月30日)




--------ここから音声内容--------





えー、核燃料棒の放射線っていうのが、だいぶ、あの色々注目されていまして、それで使用済みの核燃料の放射線がですね、非常に強くて、使用前の核燃料の放射線の1億倍ぐらいもある、と。だからもう大変なものなんだ、という話があります。まあそういう事もありますが、ちょっとこれについて解説をしたいと思います。




えー普通、あの1億倍って言う時に、前に「約」とかですね、まあ大体10億倍から1000万倍であるとか幅が書かれてたりするんですけど、これはですね、どうしてかって言いますと、使用中の物はですね、核爆発をしてますから、次から次へと放射性物質が出て来てるんですが、出来たばかりの放射性物質っていうのはもの凄く強い放射線出すんですよ。





ところが、1秒とか1分以内に分解してしまう物も多いんで、4日も経つと1000分の1になっちゃうんですよね。ですから4日で1000分の1になりますから、核爆発を止めてから直ぐ取り出すとか、ちょっと置いておくとかで、全然違うんですよね。もう10倍、100倍も直ぐ違っちゃうんで、それで、あの「約」とか何か、そういう言い方をするんですね。だからまあ、ここでは1億倍っていう風にしてちょっと考えてみたいと思います。





えー、使用済みの核燃料って色々なんで、使用前の核燃料をちょっとここに示してみたいと思うんですが、これはウランの同位体で235って言うのがあるんですが、それが4%ぐらい入った燃料なんですね。で、これはあの、原子炉に入れる時に作業員が点検をします。この写真はですね、(それを)示しました。





えー、この写真を見てビックリされる人もいると思うんですね。って言うのは作業員がですね、今から原子炉に使う燃料棒から30センチぐらいの所で、入念に検査をしています。勿論作業員は普通の作業服着てますから、えー、無防備ですね。えっとあの、普通によくテレビに出てくる、何か防護服っていうのもですね、別段放射線をシャットアウトするんじゃ無いんですよ。放射線を止めようと思うと鉛とかタングステンっていう様な物を使わなくちゃいけませんので、全然人間が着て歩けるとかいう様な物じゃないですね。ただ、粉が付いたりすると後で払い落とさなきゃいけないんで、そのための防護服を着てるっていうことですね。





まあ普通ウランは、あの、そういう事やっちゃいけないんですけど手袋をすれば手でも持てるという様な、そう言った、直ぐ手が放射線でやられてしまうと、そういう物では無いって事ですね。それ(は)これ写真で分かると思います。この写真を基準にして、使用済みの核燃料からどのぐらい離れると大丈夫なのかと、いう事をですね、あの、計算をちょっとしてみたいと思います。えー、厳密ではありませんが感覚はこの様な方が良く分かるかも知れません。





えーっと放射線っていうのはですね、その距離の2乗に反比例して減っていきます。これは放射性物質ではないんで、ちょっとややこしいんですけど、放射線の場合は距離の2乗に反比例します。で、従って写真の作業員の10倍の距離、つまり3メートルぐらい離れると100分の1になって、3キロメートルぐらい離れると、1億分の1になる、という事ですね。えーっと待ってください。えーっと3キロメートル・・・・・そうですね。3キロメートルで1億分の1ですね。…離れると1億分の1になるっていう事ですね。





つまり使用済み核燃料から3キロメートル離れると、この写真と同じように行動できるっていう事になります。だからここでは、だからどうって事を言いたく無いんで、まずあの使用前の核燃料と使用後の核燃料っていうのは、おおよそこのぐらいだ、と。実際上は、えー、使用前の核燃料っていうのはもっと近づいても大丈夫なんで、まああの、使用済み核燃料から3キロも離れなくても大丈夫ですけど、まあとりあえずこの写真からだけですと、そういう事が分かるという事ですね。





えー、今後はですね、まあ原子力とか放射線とかいう物にかなり詳しくなっとかなきゃいけないので、まあ少しずつこういった原発短信も増やしていきたいなと、一応私の計画としては、そう思っております。

(文字起こし by まあ)